講演情報

[S2-03]肩甲骨の課題を通してリーチ動作時の手指屈曲の放散反応が抑制できた右片麻痺症例

*新谷 智希1、鶴窪 良樹1 (1. MIRAI病院)
【はじめに】
今回、脳卒中片麻痺患者に対し、リーチ動作時に生じる手指屈曲の反応の制御を目的として、肩甲骨への課題を行い、放散の抑制が可能となった為、報告する。

【症例】
左脳梗塞、50代男性。BRS上肢Ⅳ、手指Ⅲ。WMFTは、課題遂行時間760.3秒。FAS37/75点。リーチ動作は、体幹左側屈、右肩甲帯挙上、肩外転・内旋、肘屈曲の動作で開始し、肩屈曲に伴い手指が伸展位から屈曲位となる。内部観察は、上肢の重量感が強く、肘や手で腕を支えているイメージで遂行していた。具体的に支える部位を問うと、詳細な回答が得られず、肩甲骨に関する発言はなかった。

【病態解釈・治療仮説】
症例は、上肢の重量に対して肘や手など遠位部で腕を支える運動イメージで遂行し、それに伴う過剰出力で手指屈曲の放散反応が出現していると解釈する。その為、肩甲骨への注意を促し、僧帽筋上部繊維の抑制と、下部繊維での肩甲骨の制御を目指す。注意やイメージの操作により、手指の放散を抑制できるのではないかと考えた。

【治療内容】
スポンジを用いた接触課題と単軸不安定板を用いた重量課題を実施。接触課題では、左右の肩甲骨にスポンジを当て、健側との差異の知覚、硬度を識別し、肩甲骨への注意を促す。重量課題は、不安定板に置いた重錘の重さの識別と板の水平性を維持することで、肩甲骨挙上を抑制し、下制での制御を促す。また、事前にどの重さがきたらどの程度の出力が必要か予測させることで、予測的制御の獲得を図った。

【結果】
入院時と比べて屈曲相での肩甲帯の挙上や手指屈曲の放散反応は減少し、手指伸展位での保持が可能となった。内省では、肩や肩甲骨で支えるイメージとなり、動作時の重量感も軽減。また、BRS上肢Ⅳ→Ⅴ、手指Ⅲ→Ⅲ、WMFTは、課題遂行時間は760.3秒→429.0秒、FASは37点→41点と改善。退院後の生活では、「ドアを右手で開けられるようになった」「買い物時、下の商品が取れるようになった」などの変化も認めた。

【考察】
訓練を通し、肩甲骨への注意や動きを学習し、肘や手ではなく肩甲骨で支える運動イメージとなり重量感が減少したと考える。また、運動イメージの変化に伴い努力感が減少したことで、遠位部での過剰出力が改善し、手指の放散反応の抑制に繋がったと考える。

【説明と同意】 
発表について口頭で説明し、同意を得た。

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