講演情報
[S4-05]術前の歩容が残存していた右人工股関節全置換術後症例に対する介入
− 身体重心と足底圧に着目したシステムアプローチ −
*姫野 万桜1、赤口 諒1、伊藤 拓海1、奥埜 博之1 (1. 摂南総合病院)
【はじめに】
人工股関節全置換術(THA)後、術前の歩容が残存するケースは少なくない。今回、術前の歩容の影響で歩行能力の改善が乏しかったTHA症例に対し、質量重心(COM)と足底圧の関係に着目したシステムアプローチを実施した経過について、考察を交えて報告する。
【症例紹介】
症例は約2年前から右変形性股関節症による疼痛が増大し、THAを施行した60歳代の女性である。術前は疼痛回避のため右股関節外転位の歩容であった。介入初期の杖歩行時は右立脚初期で右股関節外転・足関節内反位となり、立脚中期では股関節伸展が不足していた。術後4週目の歩行では股関節外転角度が軽減していたが、足関節内反位での右下肢荷重と股関節伸展の不足は残存していた。座位で膝関節屈曲運動時の足部の位置の認識について、股関節前額面上での角度条件(内転位、中間位、外転位)を設けて評価を行うと、股関節中間位を内転位と誤認していた。
【介入と経過】
症例は術前の股関節外転位の歩容により足関節内反位の荷重を誤学習していたため、床面と足底の相互作用の問題が生じていると考えた。座位で足底に傾斜板を設置し、他動運動にて股・膝関節の運動に伴う足底圧の変化を識別する課題を20分、3日間実施した。その際、股関節前額面上の角度条件の違いに伴う足底圧の変化に注意を向け、内転位条件では足底が身体の中心に近づくため、小趾側に足底圧が偏位することを教示した。その結果、歩行は立脚中期から後期で股関節内転に伴う荷重が可能となり、10m歩行は19.7秒から15.8秒、BBSは47点から56点、右下肢への最大荷重量は46kgから52kgとなった。また、介入前後に重心動揺計(テック技販社製)と深度データ計(Microsoft社製)、筋電計(Plux社製)を用いて前後随意動揺でのとヒラメ筋の協調性の指標として相互相関係数を算出したところ、右ヒラメ筋で0.64から0.88に改善した。
【考察】
術前からの歩容の異常が残存しているケースでは、損傷部位への介入のみでは不十分であることが多い。今回、股関節の運動方向と足底圧の変化を関係づける課題によって歩行能力と協調性が改善したことは、システムアプローチの重要性を示唆するものであると考える。
【倫理的配慮】
発表に関して対象に説明を行い書面にて同意を得ている。
人工股関節全置換術(THA)後、術前の歩容が残存するケースは少なくない。今回、術前の歩容の影響で歩行能力の改善が乏しかったTHA症例に対し、質量重心(COM)と足底圧の関係に着目したシステムアプローチを実施した経過について、考察を交えて報告する。
【症例紹介】
症例は約2年前から右変形性股関節症による疼痛が増大し、THAを施行した60歳代の女性である。術前は疼痛回避のため右股関節外転位の歩容であった。介入初期の杖歩行時は右立脚初期で右股関節外転・足関節内反位となり、立脚中期では股関節伸展が不足していた。術後4週目の歩行では股関節外転角度が軽減していたが、足関節内反位での右下肢荷重と股関節伸展の不足は残存していた。座位で膝関節屈曲運動時の足部の位置の認識について、股関節前額面上での角度条件(内転位、中間位、外転位)を設けて評価を行うと、股関節中間位を内転位と誤認していた。
【介入と経過】
症例は術前の股関節外転位の歩容により足関節内反位の荷重を誤学習していたため、床面と足底の相互作用の問題が生じていると考えた。座位で足底に傾斜板を設置し、他動運動にて股・膝関節の運動に伴う足底圧の変化を識別する課題を20分、3日間実施した。その際、股関節前額面上の角度条件の違いに伴う足底圧の変化に注意を向け、内転位条件では足底が身体の中心に近づくため、小趾側に足底圧が偏位することを教示した。その結果、歩行は立脚中期から後期で股関節内転に伴う荷重が可能となり、10m歩行は19.7秒から15.8秒、BBSは47点から56点、右下肢への最大荷重量は46kgから52kgとなった。また、介入前後に重心動揺計(テック技販社製)と深度データ計(Microsoft社製)、筋電計(Plux社製)を用いて前後随意動揺でのとヒラメ筋の協調性の指標として相互相関係数を算出したところ、右ヒラメ筋で0.64から0.88に改善した。
【考察】
術前からの歩容の異常が残存しているケースでは、損傷部位への介入のみでは不十分であることが多い。今回、股関節の運動方向と足底圧の変化を関係づける課題によって歩行能力と協調性が改善したことは、システムアプローチの重要性を示唆するものであると考える。
【倫理的配慮】
発表に関して対象に説明を行い書面にて同意を得ている。
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