講演情報

[S4-06]麻痺側大腿骨頚部骨折を呈し動作時の膝折れを認識できなかった右片麻痺症例
− 身体運動の予測と運動制御に着目して −

*川口 裕聖1、田島 健太朗1,2、下市 紘平1、沖田 学1,2 (1. 愛宕病院リハビリテーション部、2. 福島孝徳記念脳神経センターニューロリハビリテーション部門)
【はじめに】
今回,既往に右片麻痺があり,歩行・移乗時に膝折れが出現していた右大腿骨頚部骨折症例を経験した.特徴として,動作中の膝折れを認識できないが膝に注意を向けることで認識し,修正することができた.そこで,膝折れを認識できるように感覚情報を用いて注意の誘導を行い歩行・移乗時の膝折れが軽減したため報告する.

【症例紹介】
本症例は右大腿骨頚部骨折を受傷した80歳台の右片麻痺男性である.術後1~2週目の身体機能は右下肢(Br.stageV)筋力,支持性,動的バランス能力の低下を認めた.感覚機能は表在・深部感覚ともに正常レベルであった.認知機能はMMSE21点であった.7件法を用いた身体性評価では運動主体感・身体所有感ともに低下を認めた.特徴は歩行開始・移乗時に膝折れを認めていたが本人は「スムーズにできた」,動作時の膝に関しては「別に」「普通やった」と発言した.しかし,「膝を伸ばして移りましょう」等の声かけにより膝折れの軽減を認めた.

【病態解釈】
本症例は深部感覚が正常にもかかわらず動作時の膝折れを認識できない.さらに他者からの声かけにより動作の改善を認めることから動作時に自身の膝関節の変化を予測し,運動制御を行うことができていないのではないかと考えた.

【治療課題,結果】
治療課題は反応が良好であった感覚情報を用いて右下肢に注意を誘導し、自己にて膝折れを認識することで動作時の膝関節での運動制御が可能となることを目的に行った.課題は立位で踵や骨盤での硬度識別課題,凸凹素材・スポンジを使用した足底感覚と力量感覚の統合を促す課題を実施した.身体性評価では運動主体感,身体所有感ともに改善を認めた.また,歩行・移乗時の内省としては「右足は歩きにくい」,動作時の膝に関しては「まあまあ動かしゆう」「踏ん張っている感じ」と下肢の状態を認識した.10m歩行は快歩50.3秒53歩→33秒43歩,努力26.07秒37歩→23.6秒32歩,TUGは努力51.34秒→37.78秒と改善を認め,膝折れも軽減した.

【考察】
膝折れを認識できるように感覚情報を用いて注意の誘導,身体運動の予測,結果のフィードバックを行った.このことで動作中の膝関節での運動制御が可能となり膝折れの軽減に繋がったと考えられた.

【倫理的配慮,説明と同意】
対象者には発表に関して説明し同意を得た.また,個人情報の匿名性に配慮した.

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