講演情報
[S5-02]感覚情報を再構築することで模倣が改善した脳卒中症例
*豊田 拓磨1、沖田 かおる1、沖田 学1,2 (1. 愛宕病院リハビリテーション部、2. 愛宕病院 福島孝徳記念脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)
【はじめに】
担当した脳卒中症例は非視覚下(遮蔽下)で模倣障害を認め,運動指示に対して各関節を触らないと動かせなかった.この症例に対し感覚情報変換に着目して介入した結果,模倣が改善したため以下に報告する.
【症例紹介】
症例は左側の頭頂葉と内包から放線冠にかけて脳梗塞を認めた80歳台の右利きの女性である.発症1週後の評価から全般的知能の低下,注意障害,失行症を認めたが,日常会話に問題はなかった.視覚下の模倣は両手ともに可能(6/10)だが, 手元を隠した遮蔽下模倣では困難だった(0/10).各種の感覚情報変換(清水ら,2009)について評価すると視覚に依拠した評価項目は可能だが,体性感覚に準拠した評価項目を誤った.身体機能は運動麻痺がなく,感覚機能は右上肢に表在と深部に軽度鈍麻を認めた.特徴として,運動の教示に対し,各関節を触らないと両上肢ともに動かせなかった. 食事はスプーンを口元までリーチする途中に運動が停止し介助を要した.
【病態解釈および介入方法】
症例は視覚下の模倣行為を視覚情報で補償(沖田ら,2011)しながら正答したが,視覚情報で補償できない遮蔽下模倣では誤った.このことから,体性感覚情報を適正化できず,視覚や触覚に頼る運動を組織したと解釈した.主な介入は肩・肘・手首のいずれかを他動運動し,運動部位を認識した.認識後に他動的な関節運動を症例が自動運動にて産生する課題を実施した.全般的知能の低下を認めることから,課題を単純明快にし,視覚下から遮蔽下に段階的に難易度を調整した.
【結果】
発症4週後,全般的知能には変化なく,注意障害と失行症が改善した.模倣は左手が視覚下・遮蔽下ともにできた(10/10).右手は視覚下が可能(8/10)で, 遮蔽下は時間を要してできた(8/10).各種の感覚情報変換の評価は体性感覚に準拠した評価項目の誤りが改善した.また,運動の教示に対し,関節を触らずに動かせた. 食事は口元までリーチでき自立した.
【考察】
今回,視覚情報や運動部位の接触に依拠した運動を行った症例に対して,感覚情報を解読し,その情報を基に自己の運動に変換して産生する課題を実施した.その結果,体性感覚に準拠した運動が学習され模倣が改善したと考えた.
【倫理的配慮(説明と同意)】
対象者とその家族から発表に関して書面で説明し同意を得た.また,個人情報保護の匿名性に留意した.
担当した脳卒中症例は非視覚下(遮蔽下)で模倣障害を認め,運動指示に対して各関節を触らないと動かせなかった.この症例に対し感覚情報変換に着目して介入した結果,模倣が改善したため以下に報告する.
【症例紹介】
症例は左側の頭頂葉と内包から放線冠にかけて脳梗塞を認めた80歳台の右利きの女性である.発症1週後の評価から全般的知能の低下,注意障害,失行症を認めたが,日常会話に問題はなかった.視覚下の模倣は両手ともに可能(6/10)だが, 手元を隠した遮蔽下模倣では困難だった(0/10).各種の感覚情報変換(清水ら,2009)について評価すると視覚に依拠した評価項目は可能だが,体性感覚に準拠した評価項目を誤った.身体機能は運動麻痺がなく,感覚機能は右上肢に表在と深部に軽度鈍麻を認めた.特徴として,運動の教示に対し,各関節を触らないと両上肢ともに動かせなかった. 食事はスプーンを口元までリーチする途中に運動が停止し介助を要した.
【病態解釈および介入方法】
症例は視覚下の模倣行為を視覚情報で補償(沖田ら,2011)しながら正答したが,視覚情報で補償できない遮蔽下模倣では誤った.このことから,体性感覚情報を適正化できず,視覚や触覚に頼る運動を組織したと解釈した.主な介入は肩・肘・手首のいずれかを他動運動し,運動部位を認識した.認識後に他動的な関節運動を症例が自動運動にて産生する課題を実施した.全般的知能の低下を認めることから,課題を単純明快にし,視覚下から遮蔽下に段階的に難易度を調整した.
【結果】
発症4週後,全般的知能には変化なく,注意障害と失行症が改善した.模倣は左手が視覚下・遮蔽下ともにできた(10/10).右手は視覚下が可能(8/10)で, 遮蔽下は時間を要してできた(8/10).各種の感覚情報変換の評価は体性感覚に準拠した評価項目の誤りが改善した.また,運動の教示に対し,関節を触らずに動かせた. 食事は口元までリーチでき自立した.
【考察】
今回,視覚情報や運動部位の接触に依拠した運動を行った症例に対して,感覚情報を解読し,その情報を基に自己の運動に変換して産生する課題を実施した.その結果,体性感覚に準拠した運動が学習され模倣が改善したと考えた.
【倫理的配慮(説明と同意)】
対象者とその家族から発表に関して書面で説明し同意を得た.また,個人情報保護の匿名性に留意した.
閲覧にはパスワードが必要です
パスワードは参加登録した方へメール配布しております。