講演情報
[P3-01]恐怖心によるスティフネス戦略からの脱却にライトタッチ効果を活用した脳卒中患者の1例-過剰な上肢支持の低減に向けた臨床的留意点-
*橋本 宏二郎1、壹岐 伸弥1、平田 康介1、石垣 智也1,2、川口 琢也1 (1. 川口脳神経外科リハビリクリニック、2. 畿央大学 健康科学部 理学療法学科)
【はじめに】
転倒恐怖心(以下,恐怖心)により,立位姿勢でスティフネス戦略(以下,剛性戦略)を呈す脳卒中患者では,過剰な上肢支持により環境に適応した柔軟な運動制御が困難となる.本報告の目的は,剛性戦略の緩和に対するライトタッチ効果の有用性と,臨床応用における留意点を症例経過から考察することである.
【症例紹介】
脳幹(中脳〜橋背側)出血を発症(X日)後,X+4ヶ月より外来理学療法を開始した30代の女性である.X+7ヶ月のScale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)は13点であり,重心動揺計の計測では,開眼閉脚立位の外周面積が11.4cm2であった.意識経験は「360度揺れている.転倒しそうで怖い」とNumerical Rating Scale(NRS)で8/10の恐怖心を示し,手放し立位のイメージ想起のみでも恐怖心を強く認め,自宅生活では過剰な上肢支持を要していた.体幹と足部を主とした認知課題を実施し,X+8ヶ月には外周面積は8.5cm2に減少したが,SARAと意識経験に変化を認めなかった.
【病態解釈・治療仮説】
長期化する剛性戦略が定着し,恐怖心から姿勢動揺に注意が喚起され,剛性戦略がより助長される状態にあると推察した.一方,固定物へのライトタッチにより恐怖心が軽減した.また,立位姿勢の安定感を知覚しつつ,上肢支持の緩和が可能であったため,ライトタッチ効果の活用は剛性戦略の是正に有用と考えた.
【介入と経過】
X+9ヶ月より,ライトタッチ効果を用いた立位での重心移動課題を週1回40分で開始した.課題中は足底の触圧覚情報に注意を喚起しつつ,主観的な安定感が得られる足底の荷重位置を探索した.意識経験に応じて,ライトタッチの対象を固定物から不安定かつ動的な対象へ展開した.X+15ヶ月には重心移動に応じた荷重位置の制御が可能となり,「この位置なら怖くない」と意識経験が変化(恐怖心:NRS2)し,自宅生活における上肢支持も減少した.
【考察】
恐怖心からの剛性戦略を是正するために,ライトタッチ効果は有用な手段となり得る.この際,足底の知覚経験と主観的な立位姿勢の安定感を統合しつつ,ライトタッチの対象を段階的に不安定かつ動的な対象へ移行することが重要と考えられた.
【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表に際し,症例に口頭と書面にて説明し同意を得た.
転倒恐怖心(以下,恐怖心)により,立位姿勢でスティフネス戦略(以下,剛性戦略)を呈す脳卒中患者では,過剰な上肢支持により環境に適応した柔軟な運動制御が困難となる.本報告の目的は,剛性戦略の緩和に対するライトタッチ効果の有用性と,臨床応用における留意点を症例経過から考察することである.
【症例紹介】
脳幹(中脳〜橋背側)出血を発症(X日)後,X+4ヶ月より外来理学療法を開始した30代の女性である.X+7ヶ月のScale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)は13点であり,重心動揺計の計測では,開眼閉脚立位の外周面積が11.4cm2であった.意識経験は「360度揺れている.転倒しそうで怖い」とNumerical Rating Scale(NRS)で8/10の恐怖心を示し,手放し立位のイメージ想起のみでも恐怖心を強く認め,自宅生活では過剰な上肢支持を要していた.体幹と足部を主とした認知課題を実施し,X+8ヶ月には外周面積は8.5cm2に減少したが,SARAと意識経験に変化を認めなかった.
【病態解釈・治療仮説】
長期化する剛性戦略が定着し,恐怖心から姿勢動揺に注意が喚起され,剛性戦略がより助長される状態にあると推察した.一方,固定物へのライトタッチにより恐怖心が軽減した.また,立位姿勢の安定感を知覚しつつ,上肢支持の緩和が可能であったため,ライトタッチ効果の活用は剛性戦略の是正に有用と考えた.
【介入と経過】
X+9ヶ月より,ライトタッチ効果を用いた立位での重心移動課題を週1回40分で開始した.課題中は足底の触圧覚情報に注意を喚起しつつ,主観的な安定感が得られる足底の荷重位置を探索した.意識経験に応じて,ライトタッチの対象を固定物から不安定かつ動的な対象へ展開した.X+15ヶ月には重心移動に応じた荷重位置の制御が可能となり,「この位置なら怖くない」と意識経験が変化(恐怖心:NRS2)し,自宅生活における上肢支持も減少した.
【考察】
恐怖心からの剛性戦略を是正するために,ライトタッチ効果は有用な手段となり得る.この際,足底の知覚経験と主観的な立位姿勢の安定感を統合しつつ,ライトタッチの対象を段階的に不安定かつ動的な対象へ移行することが重要と考えられた.
【倫理的配慮(説明と同意)】
本発表に際し,症例に口頭と書面にて説明し同意を得た.
