講演情報
[P3-04]歩行時,右空間への安全配慮が不十分な患者への介入経験
*菅原 紘子1 (1. 函館稜北病院)
【はじめに】 今回,歩行時に右側の物や人との距離が近く安全に歩行できない症例を経験した.左右連続性のある課題を行ない,改善を認めたため経過を報告する. 【症例】 左MCA領域に脳梗塞を発症した80歳代女性.発症から約1ヶ月で当院へ転院となった.麻痺は軽度で感覚障害はなく,独歩で歩行可能だった.高次脳機能障害は注意機能障害(TMT-A:643秒),失語症(運動性失語)があった.人が多い環境では右側の物や人との距離が近く,声がけと誘導が必要だった.方向転換は左下肢から先行することが多く,TUGは12秒台だった.縦横50cmのスペースの床から物を拾う課題では,見落としはないものの左空間から左上肢を中心に使用して実施し,右上肢を1度も使用しない場面も観察された.認知機能は問題なく,確認した内容を翌日も記憶していることが可能だった. 【病態解釈】 複数の注意が必要な環境,歩行路や動作の自由度が高い場面では,右上下肢の使用や右側への注意が不十分な場面が観察された.三上ら(2020)は下肢に消去現象がある症例への連続性のある課題の有効性を報告している.本症例も左右足部を1つの表象として知覚できるようになることで,歩行の効率や安全性の向上が図れないかと考えた. 【訓練・結果】 イラストを使用した両下肢の位置を問う課題,絨毯を両下肢の足底へ挿入し向きを問う課題を10日間実施した.イラストを使用した課題では,どちらの下肢が前にでているのか解答するまでに時間を要することが多かった.絨毯の向きを問う課題では,開眼下でも斜めの向きでエラーすることがあったが,徐々に両下肢を動かしながら解答する場面が観察されるようになった.いずれの課題も繰り返すことで,解答時間の短縮,エラーの減少を認めた.TMT-Aは308秒となり,以前よりも適切な距離で歩行可能となった.方向転換は両下肢を使用して可能となり,TUGは9~10秒台となった.物を拾う課題も左空間にやや偏りはあるものの,左右の上肢と空間を使用することが可能となった. 【考察】 連続性のある課題を行なったことで両下肢の情報が統合され,左優位になりやすい場面でも左右への注意を適切に分配することが可能になったと考える.しかし屋外歩行では右側の配慮が不十分な場面は残存した為,今後の課題としたい. 【倫理的配慮、説明と同意】 本発表に対して症例に説明し同意を得ている.
