講演情報

[P3-09]麻痺側下肢の使用を中心とした認知運動課題により歩行再獲得を目指した右片麻痺症例

*下市 紘平1、沖田 学2 (1. 高知県立幡多けんみん病院 リハビリテーション科、2. 新松田会愛宕病院 福島孝徳記念脳神経センター ニューロリハビリテーション部門)
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【はじめに】
今回,左脳梗塞の発症後,拡散テンソルトラクトグラフィーによるFA比は良好な運動麻痺の予後を示唆した症例が下肢や体幹の支持性低下や下肢振り出しの操作性低下が顕著であり歩行再獲得に困難を呈していた.そこで麻痺側下肢使用を中心とした認知運動課題が歩行再獲得に繋がった症例を提示する.

【方法および症例報告】
症例は左放線冠・被殻に脳梗塞を発症した60歳台女性である.入院翌日に運動麻痺が進行しBRSは右上下肢共にⅠレベルとなった.発症後14日目の初期評価ではBRSは右下肢Ⅲレベルで股関節の深部感覚は重度鈍麻であった.運動麻痺の予後予測として拡散テンソルトラクトグラフィーを用いて分析したFA比では,皮質脊髄路0.14,網様体脊髄路0.05で予後良好(竹内,2015)であった.歩行は平行棒介助レベルで,右下肢振り出し位置が定まらず,下肢の支持性も低下していた.また歩行時に「足に力が入らん,どこに足を出しているかわからん」と発言した.本症例の歩行が困難となった理由として,BADにより運動麻痺が進行し,下肢や体幹の支持性低下及び,深部感覚障害により下肢運動方向の認識や操作性が低下し歩行が困難になっていると考えた.

【結果および経過】
FA比より麻痺側を中心とした運動訓練が有効(竹内,2015)と言われている.本症例の歩行再獲得に対する治療として,麻痺側下肢の使用を中心に認知運動課題を併用し歩行再獲得を目指した.患側下肢と骨盤帯の制御能力の向上を目的に,平行棒内にて患側骨盤側方に硬度の異なるスポンジを接触させ硬度識別課題を行った.また患側下肢に注意を向け,立位にて患側下肢を他動的に動かし,どの方向に動いたか運動認識を行う課題をまずは視覚にて確認し,その後体性感覚のみと難易度を変更し実施した.また患側下肢を目標物に向けて振り出す課題や歩行練習も実施した.課題開始150日目では,右下肢BRSでⅣレベルとなり股関節の深部感覚も正常となった.歩行は4点杖自立レベルとなり.歩行観察上でも下肢の振り出し位置が安定し.「足で踏ん張れる,コントロールして足を出せる」と発言し運動制御感も得られた.

【考察】
FA比の予測を踏まえ,体幹・下肢支持性低下や下肢振り出し操作性低下に対し認知運動治療併用が歩行再獲得を促進したと考える.

【倫理的配慮】
発表に際し本人へ説明し同意を得た.また,個人情報保護に配慮した.