講演情報

[P3-10]触覚情報にて圧覚情報を代償させる介入によりpush off改善を認めた一症例
-“靴の中”での知覚経験を経て-

*松川 拓1、藤原 瑶平1、石橋 凜太郎1、市村 幸盛1 (1. 村田病院)
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【はじめに】
足底触圧覚はpush offの際,足関節底屈から背屈へ切り替えに筋出力を調整し,足趾clearanceの維持に関与する(Zehrら 1997).今回,前足部の感覚障害によりpush offが不十分な症例に対し,触覚にて圧覚情報を代償する介入により歩行自立に至った事例報告をする.

【症例紹介】
右利き70代男性.左前頭葉皮質下出血を発症約1ヶ月後,BRS.右下肢Ⅵ,MMT両下肢5,触覚軽度~中等度鈍麻(末梢優位),運動覚軽度鈍麻,圧覚重度鈍麻,10mWT(快適/最大)45.2/35.4s・35/30歩.右TSt-PSwで下腿三頭筋の過剰収縮を認め,push offが不十分となり足趾clearanceが低下,病棟内歩行見守りであった.また歩行時に「体重がどれくらい乗ってるかわからん.特に足先で蹴ってる感覚ないから持ち上げちゃう.」と記述した.前足部の圧覚は,差異が大きくても知覚困難で下腿三頭筋の過剰収縮を認めた.素材識別は可能で,「強く押した方がザラザラして大きく引っかかる感じ」と記述し,摩擦と圧覚を関連付けるような記述があった.そこで,不安定板の前足部に粗い素材を配置し,スポンジを不安定板の前方の下に置いた環境で識別課題を行うと「強くこすれる印象」と記述し,識別可能となる場面を認めた.

【病態解釈】
push offが不十分な原因としては,前足部の圧覚障害により,下腿三頭筋の筋出力調節が困難となっていることが問題と考えた.そこで,摩擦の強弱にて前足部の圧覚を代償させた認知課題を実施することで,push offを改善できないかと考えた.

【介入】
座位から立位,step位と段階付けをした上記環境下での識別課題,歩行訓練を実施(40分/日×2週間).

【結果と考察】
感覚検査上,大きな改善はなかったが,圧の識別は可能となり10mWT(11.8/10.2s・22/20歩)は改善を認めた.歩行観察では,下腿三頭筋の過剰出力が消失し,push offが改善したことで病棟内独歩自立となった.また介入中,push offが出現した際に「靴の中でこすれた時に引っかからない」「前足が靴の中でぐっとずれて押してる感覚みたいなんも感じる」と記述に変化を認め,摩擦の強弱を用いて圧を代償的に知覚できたことが改善に至った要因であると考えられた.

【倫理的配慮】
本人に紙面で説明し,書面にて同意を得た.