講演情報

[P3-12]外傷性くも膜下出血および,びまん性軸索損傷後に左下肢運動失調を呈した症例に対する下り坂歩行における減速制御の獲得に向けた介入

*山口 浩貴1、高木 泰宏2、上田 将吾1、山中 真司3、上羽 孝大2、中西 亮太1、板野 綾佳1、加藤 祐一4 (1. 結ノ歩訪問看護ステーション、2. むすびのあゆみキッズ、3. デイサービスセンター結ノ歩、4. 結ノ歩訪問看護ステーション東山)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【はじめに】交通外傷後,慢性期に左下肢運動失調症状が残存し,下り坂歩行における減速制御が困難であった症例を経験した.足底圧情報を構築する課題により減速制御の獲得に繋がったため報告する.

【症例紹介】外傷性くも膜下出⾎および,びまん性軸索損傷後5年が経過した20歳代男性.受傷1年後より訪問でのリハビリテーションを開始した.下り坂歩行にて「止まれない」と訴えた.左立脚中期から後期にかけて膝関節は伸展位で固定され,左股関節の急速な伸展に伴う前下方への過度な加速を認め膝折れが出現した.運動麻痺は認めず,感覚は表在・深部覚共に正常であった.Scale for the Assessment and Rating of Ataxia(SARA)は12点で失調を認めた.座位での左足部前額軸不安定板課題にて股関節内外旋に動揺を認め「股関節が司令塔で,下は従っているだけ」と語った.立位での左足底圧識別課題では,硬度識別は可能だが,膝関節は伸展で固定され体幹を移動することで踏み込む戦略をとり,細分化は不十分であった。

【病態解釈】症例は,びまん性軸索損傷により左半身に運動失調を呈し,下り坂歩行での減速制御に困難を生じていた.評価的訓練にて左股関節の協調運動障害が動揺の原因であると確認され,立位足底圧識別課題では左股・膝関節の制御を伴う足底圧情報の構築が困難であった.その結果, 膝関節を伸展位に固定し足底圧情報を構築する戦略が学習されたと解釈した.

【訓練】左股・膝関節の制御を伴う足底圧情報の構築により,下り坂歩行における左立脚期の減速制御の獲得を目的とした.3つのスポンジを用い, 前足部内外側および踵部で圧情報を識別する課題を実施した.姿位は座位から立位へ移行した.頻度は週1回60分間,訓練期間は6週間実施した.

【結果】体幹移動を伴うスポンジの踏み込みから,股・膝関節を制御する動きへと変化し,下肢全体の過剰な運動単位の動員が減少した.下り坂歩行では,左立脚中期から後期にかけて膝の協調的な屈曲がみられ,減速制御が可能となった.

【考察】座位での左股関節内外旋,立位での左股・膝関節の屈伸制御を通じて足底圧が細分化して圧を識別することが可能となり,下り坂歩行の減速制御に寄与したと考える.失調症状に対し運動制御を伴いながら知覚を求める課題が有効であることが示唆された.

【倫理的配慮】本発表について説明し同意を得た.