講演情報
[P3-14]歩行時に3本目の脚が出現するパーキンソン病患者の1例
-余剰幻肢の病態と介入可能性に対する考察-
*三上 純1,2、壹岐 伸弥2、石垣 智也3,2、及川 岳4、川口 琢也2,1 (1. 株式会社フルラフ、2. 川口脳神経外科リハビリクリニック、3. 畿央大学 健康科学部 理学療法学科、4. もりおか往診ホームケアクリニック)
【はじめに】
余剰幻肢は脳卒中では右半球損傷・重度感覚障害・病態失認の併存例に多いが,パーキンソン病(PD)での報告はみられない.本報告では,歩行時に下肢の余剰幻肢を呈すPD患者の介入経過から,その病態と介入可能性を考察する.
【症例紹介】
症例はX-3年に歩行障害が出現し,X-1年にPDと診断され,リハビリテーション目的でX日より当施設を利用開始した60歳代の男性である.日常生活は自立し,Unified Parkinson's Disease Rating Scale PARTⅢは14/56点(左上下肢の筋強剛・左手の運動・左回内外・左つま先のタッピング等で加点),MMSEは30点であった.感覚検査は正常で病態失認は認めなかった.歩行中に「右脚の付根から左脚がもう1本出てくる.偽物とわかっているが制御できない.本物の脚の存在が薄くなる」と余剰幻肢を訴えた.幻肢はSerial 7を行いながらの歩行で再現された.
【病態解釈】
余剰幻肢は求心性感覚情報が遮断され,予測誤差の乖離を修正できないために出現するとされる(花田ら,2017).PDは感覚入力に必要な注意の抑制機能が低下する(Conteら,2013).本症例は,注意の選択・分配を要する歩行場面で幻肢が再現された.つまり,注意の焦点化が必要な場面で不要な情報を抑制できず,左下肢の求心性情報が減弱し,予測との乖離から自己の左下肢の感覚を,外部刺激と誤認し幻肢が出現すると考えた.
【治療介入・経過】
座位で股関節の内外転を行い,足底でスポンジの接触部位を問う課題を実施した.左は足底の接触のみを回答したが,言語的援助で股関節の運動覚にも注意を向けられるようになった.その後「足の開閉でスポンジのあたる位置が変わる」と,股関節の空間と足底への接触に注意分配が可能となった.さらに「左脚を出す時に足がふらつく.股関節の開き方を気にしてみる」と歩行時の注意の焦点化が可能となり,X+3ヶ月に余剰幻肢が消失した.
【考察】
PDでは固有受容覚処理の低下と視覚依存の増加がみられ,視覚代償が行いにくい下肢に余剰幻肢が出現したと考えられる.特に左下肢は空間・接触情報の統合が困難であり,一側性に出現したと考えた.余剰幻肢を呈するPD症例には,注意の焦点化を図る介入が有効となる可能性がある.
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に際し説明を行い同意を得た.
余剰幻肢は脳卒中では右半球損傷・重度感覚障害・病態失認の併存例に多いが,パーキンソン病(PD)での報告はみられない.本報告では,歩行時に下肢の余剰幻肢を呈すPD患者の介入経過から,その病態と介入可能性を考察する.
【症例紹介】
症例はX-3年に歩行障害が出現し,X-1年にPDと診断され,リハビリテーション目的でX日より当施設を利用開始した60歳代の男性である.日常生活は自立し,Unified Parkinson's Disease Rating Scale PARTⅢは14/56点(左上下肢の筋強剛・左手の運動・左回内外・左つま先のタッピング等で加点),MMSEは30点であった.感覚検査は正常で病態失認は認めなかった.歩行中に「右脚の付根から左脚がもう1本出てくる.偽物とわかっているが制御できない.本物の脚の存在が薄くなる」と余剰幻肢を訴えた.幻肢はSerial 7を行いながらの歩行で再現された.
【病態解釈】
余剰幻肢は求心性感覚情報が遮断され,予測誤差の乖離を修正できないために出現するとされる(花田ら,2017).PDは感覚入力に必要な注意の抑制機能が低下する(Conteら,2013).本症例は,注意の選択・分配を要する歩行場面で幻肢が再現された.つまり,注意の焦点化が必要な場面で不要な情報を抑制できず,左下肢の求心性情報が減弱し,予測との乖離から自己の左下肢の感覚を,外部刺激と誤認し幻肢が出現すると考えた.
【治療介入・経過】
座位で股関節の内外転を行い,足底でスポンジの接触部位を問う課題を実施した.左は足底の接触のみを回答したが,言語的援助で股関節の運動覚にも注意を向けられるようになった.その後「足の開閉でスポンジのあたる位置が変わる」と,股関節の空間と足底への接触に注意分配が可能となった.さらに「左脚を出す時に足がふらつく.股関節の開き方を気にしてみる」と歩行時の注意の焦点化が可能となり,X+3ヶ月に余剰幻肢が消失した.
【考察】
PDでは固有受容覚処理の低下と視覚依存の増加がみられ,視覚代償が行いにくい下肢に余剰幻肢が出現したと考えられる.特に左下肢は空間・接触情報の統合が困難であり,一側性に出現したと考えた.余剰幻肢を呈するPD症例には,注意の焦点化を図る介入が有効となる可能性がある.
【倫理的配慮、説明と同意】
本発表に際し説明を行い同意を得た.
