講演情報
[P6-02]右片麻痺児に運動イメージの転移を通じて、右手の食器の把持が変化した症例
*八重崎 祥太1、高橋 秀和1 (1. 北海道こども発達研究センター)
【はじめに】
今回,右上肢の軽度運動麻痺を呈す児童に,手指の注意の分配による複数の体性感覚情報の統合と左手を参考にした右手の構えの運動イメージの想起を求めた.食事場面の把持機能の改善により,食事中に安定したお椀の把持を獲得したため報告する.
【症例紹介】
幼少期に二相性脳症後遺症と診断された軽度の右片麻痺を呈す14歳の男児.BRS:上肢Ⅵ,手指Ⅴ(球握り不可),下肢Ⅵ.MMT:手指(MP関節)2.右手指の表在感覚は10点法で10点.深部感覚は環指,小指が軽度鈍麻.両手動作で右手指に注意が向き難い.開眼で左右共に同じ手の動作を求めると回答に10秒程掛かり「(左と比べて)持つのが違う気がする.けど何が違うかわかんない」と記述し,運動イメージの不鮮明さを認めた.右手でお椀を把持するが手関節背屈,尺屈の放散反応と小指の運動単位の動員異常により手指外転が困難だった.給食中は食器の把持の不安定さから右手を下げていた.
【病態解釈・治療仮説】
右手の構えは各手指への注意の分配の困難さから複数の体性感覚情報が限局化し,求心性情報の統合のエラーにより,右手の運動イメージの不鮮明さに繋がると考えた.各手指に同時的に注意を向けて,両手共に同様の手の構えの運動イメージを想起できることで,食事場面でも左手を参考にした食器を持つ構えが出来るのではと考えた.
【訓練】
把持機能の改善を目的に①表面素材を貼った長方形の箱を両手で把持する手指の複数の体性感覚情報の統合課題と②毎回形を変えた立方体を日常の物品に置き換え,左側の手関節,手指の運動方向と距離の運動イメージを想起と実際に右手で把持の構えを分析する課題を週2回・3カ月実施した.
【結果と考察】
BRS:上肢Ⅵ,手指Ⅴ(球握り可),下肢Ⅵ,MMT:手指(MP関節)3に改善.食器把持は右手関節の放散反応と小指の動員異常は軽減した。右小指に注意を分配し「小指が開いてない」「手首が曲がってる」と記述するなど右手の運動イメージを2秒程で想起させて病理を制御することが可能となった.給食場面での小指は外転位で食器を安定して把持することが可能となった.左手から右手の運動イメージの転移を通じて複数の体性感覚情報の統合が進み,手の構えの運動イメージの明瞭化と食事場面の把持機能の改善に繋がったと考えられる.
【倫理的配慮】
保護者にプライバシーの保護について説明し同意を得た.
今回,右上肢の軽度運動麻痺を呈す児童に,手指の注意の分配による複数の体性感覚情報の統合と左手を参考にした右手の構えの運動イメージの想起を求めた.食事場面の把持機能の改善により,食事中に安定したお椀の把持を獲得したため報告する.
【症例紹介】
幼少期に二相性脳症後遺症と診断された軽度の右片麻痺を呈す14歳の男児.BRS:上肢Ⅵ,手指Ⅴ(球握り不可),下肢Ⅵ.MMT:手指(MP関節)2.右手指の表在感覚は10点法で10点.深部感覚は環指,小指が軽度鈍麻.両手動作で右手指に注意が向き難い.開眼で左右共に同じ手の動作を求めると回答に10秒程掛かり「(左と比べて)持つのが違う気がする.けど何が違うかわかんない」と記述し,運動イメージの不鮮明さを認めた.右手でお椀を把持するが手関節背屈,尺屈の放散反応と小指の運動単位の動員異常により手指外転が困難だった.給食中は食器の把持の不安定さから右手を下げていた.
【病態解釈・治療仮説】
右手の構えは各手指への注意の分配の困難さから複数の体性感覚情報が限局化し,求心性情報の統合のエラーにより,右手の運動イメージの不鮮明さに繋がると考えた.各手指に同時的に注意を向けて,両手共に同様の手の構えの運動イメージを想起できることで,食事場面でも左手を参考にした食器を持つ構えが出来るのではと考えた.
【訓練】
把持機能の改善を目的に①表面素材を貼った長方形の箱を両手で把持する手指の複数の体性感覚情報の統合課題と②毎回形を変えた立方体を日常の物品に置き換え,左側の手関節,手指の運動方向と距離の運動イメージを想起と実際に右手で把持の構えを分析する課題を週2回・3カ月実施した.
【結果と考察】
BRS:上肢Ⅵ,手指Ⅴ(球握り可),下肢Ⅵ,MMT:手指(MP関節)3に改善.食器把持は右手関節の放散反応と小指の動員異常は軽減した。右小指に注意を分配し「小指が開いてない」「手首が曲がってる」と記述するなど右手の運動イメージを2秒程で想起させて病理を制御することが可能となった.給食場面での小指は外転位で食器を安定して把持することが可能となった.左手から右手の運動イメージの転移を通じて複数の体性感覚情報の統合が進み,手の構えの運動イメージの明瞭化と食事場面の把持機能の改善に繋がったと考えられる.
【倫理的配慮】
保護者にプライバシーの保護について説明し同意を得た.
