講演情報

[P6-06]「見るよりもおへそを感じるほうがばっちり」
情報の重みづけの変化によって新たな姿勢調整を学習できた軽度脳性麻痺症例への介入について

*宮城 大介1 (1. 青磁野リハビリテーション病院)
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【はじめに】今回、軽度アテトーゼ型脳性麻痺の症例に対し姿勢調整のポイントの定着を図ることで、生活の基盤となる情報構築が可能となった。その関わりの経過について考察を踏まえ報告する。

【症例紹介】脳性麻痺の10代後半女性であり、今後の就職活動に向け教員の勧めにて外来リハでの週1回の対応となる。初期評価時、GMFCS1で精神的な緊張により右上下肢の筋緊張亢進と不随意運動を認めた。うまく歩けるようになりたいと話し、上肢への問いには手を隠す場面を認めた。また、筋活動の制御には「遠くを見る」「違う事を考える」と話す。体性感覚評価では単関節の知覚は可能だが、複数関節では混乱あり、上下肢への接触では不随意運動が出現し痛みを認めた。また、動作の模倣で混乱を認めた。会話での表現は拙く、身体の説明には困難さも認めた。

【病態解釈と治療戦略】上下肢の筋緊張の制御は心理的影響が強く視覚優位であり、手に対しては劣等感を抱いていた。これらのことを踏まえ、「うまく歩くための姿勢」を初期目標として共有し、関係性を構築しながら上下肢の筋活動の制御に向かえるよう関わった。

【経過】四肢と体幹との位置関係を基に坐位、立位姿勢の確認から開始した。訓練中は言葉を強要せず、本人の非言語的表現の共用や、携帯電話のメモ機能も活用し学習を図った。4回目の対応中、「垂直な棒」のイメージを共有する中で「後ろ」に対しての発言あり、その後の体幹への接触課題にて体性感覚優位での姿勢調整が可能となった。その後「目の前の物を基準にすると、それがなくなっちゃうとできなくなるから、おへそを意識したほうがいい」と話し、生活での姿勢調整の方略に変化を認めた。また、重心動揺計での評価にて動揺範囲面積の左右比の偏移が均等となった。さらに、上肢の筋活動にも変化を認め、疼痛なく接触課題が可能となった。

【考察】一般的に脳性麻痺患者のアテトーゼ様の筋活動は、心理的影響を強く受けるとされている。今回、症例の振る舞いに応じた関りを基に関係性構築に至った事で精神的な安定を得ることができ、スムーズに課題介入へ至ることができた。また、この関係性から課題指向的な取組みを可能とし、姿勢制御の重みづけが体性感覚優位となる気づきを得られた事で、生活汎化と上肢の疼痛緩和にも繋がったと思われた。

【倫理的配慮】症例への説明と同意を得ており、所属機関内の倫理委員会で了承されている。