大会長挨拶
第96回日本寄生虫学会大会開催にあたって
第96回日本寄生虫学会大会を、2027年3月18日(木)、19日(金)の2日間、岐阜市のじゅうろくプラザにて開催いたします。岐阜で日本寄生虫学会大会が開催されるのは、今回が初めてとなります。
本大会のテーマは、「寄生虫学の現在と未来」としました。
少し大きなテーマではありますが、未来を予測しようというわけではありません。私たちがこれまで何を明らかにしてきたのか、いま何ができるようになっているのか、そして誰がその研究を担っているのか。寄生虫学の現在地をいくつかの角度から眺めることで、その先にあるものを考えてみたいと思っています。
その一つが「人」です。日本寄生虫学会では、若手研究者を対象としたベストプレゼンテーション賞(BPA)が毎年選ばれてきました。本大会では、これまでのBPA受賞者が、その後どのような道を歩み、現在どのような立場で、どのような研究を行っているのかを紹介していただく企画を予定しています。研究の未来は、新しい技術や研究テーマだけでなく、それを担う人によってつくられます。かつて若手研究者として本大会で発表した人たちの現在を見ることも、寄生虫学の未来を考えることにつながるはずです。
研究手法の面でも、大きな変化が起きています。原虫研究では比較的早くから分子生物学的手法が取り入れられ、遺伝子やゲノムを基盤として寄生虫を理解する研究が大きく発展してきました。一方、多細胞で複雑な生活環をもつ蠕虫では、実験技術上の制約も少なくありませんでした。しかし近年、ゲノム解析、機能解析、遺伝子改変などの技術が急速に進展し、蠕虫研究も新しい段階に入りつつあります。本大会では、現在起きているこうした変化を通して、蠕虫研究のこれからについて考えます。
そして、もう一つの「未来」があります。それは、寄生虫学ではなく、寄生虫そのものの未来です。
寄生虫と宿主は、長い進化の時間の中で互いに影響を与えながら変化してきました。宿主側に生じた変化は寄生虫に新たな選択圧を与え、寄生虫の存在もまた宿主の形質に影響を及ぼします。本大会では、「共進化表現型」という視点から、宿主と寄生虫の関係の中で生み出されてきた現象を見つめます。過去の共進化を理解することは、これから寄生虫がどのように変化し、どのような形で宿主と共存し、あるいは新たな関係を築いていくのかを考える手がかりにもなるでしょう。進化という時間軸から、「寄生虫の未来」そのものについても考えてみたいと思います。
「現在と未来」といっても、未来がどこかに決まった形で待っているわけではありません。研究を担う人、新しい研究手法、宿主と寄生虫の関係、そして進化し続ける寄生虫そのもの。そうしたいくつもの現在を見つめることから、寄生虫学の未来と、寄生虫の未来の双方を考える大会にしたいと思っています。
一般演題を含め、本大会が世代や研究対象、研究手法を越えて議論する場となり、それぞれの参加者が寄生虫学の「現在」を持ち寄り、その先を考える2日間となることを願っています。
多くの皆様のご参加、ご発表を心よりお待ちしております。
第96回日本寄生虫学会大会
大会長 前川 洋一
岐阜大学 大学院医学系研究科
寄生虫学・感染学分野
