講演情報

[学校保健体育-A-01]「良質な体育」と学習指導要領における体育の安全をめぐる解釈の差異(教)

*中村 有希1,2、梅澤 秋久3 (1. 九州共立大学、2. 東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科、3. 横浜国立大学)
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体育は身体活動を伴う教育であり、子どもの怪我や事故のリスクは少なからず存在する。日本スポーツ振興センター(2024)によると、各教科等で起きる負傷件数のうち、体育は小学校で71,081件(82.3%)、中学校で70,152件(94.1%)、高等学校で45,988件(95.8%)と報告されており、各教科等の事故は約8割~9割が体育で起きている。したがって、体育の安全をめぐる問題は、体育科教育学分野において長年にわたり指摘されてきた課題でもある。実際に、UNESCO(2015)が提唱する「良質な体育(Quality Physical Education)」では、「子どもの安全・保護」、「身体リテラシー」、「包摂・共生」(梅澤訳,2020)の3つが主要な要素であるとされており、体育の安全は「良質な体育」を保障する中核に位置づいている。
 他方、文部科学省(2021)は「令和の日本型学校教育」において、子ども個々の興味・関心・意欲等を踏まえてきめ細かく指導・支援することや、子どもが自らの学習状況を把握し、主体的に学習を調整する「個別最適な学び」や「協働的な学び」の充実を求めている。体育においても、子どもが自身の状況に応じて主体的に運動に向かう学習や、子どもの個性や能力に応じて協働的に学習を進めていく教育が求められている。このような体育学習が求められる中、体育の安全をどのように保障していくのか、学習観の変容と併せて安全の在り方を問うていく必要があるだろう。
 かかる問題意識から、本研究では、UNESCOの「良質な体育」と我が国の学習指導要領における体育の安全をめぐる解釈の差異を比較検討することを通して、「令和の日本型学校教育」における良質な体育の安全の在り方を検討するための基礎的知見を得る。詳細は、当日に報告する。

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