講演情報

[競技スポーツ-B-10]世界トップレベルの兄弟姉妹アスリートの競技生活における相互関係のあり様(コ)

*髙木 菜那1、清野 隼2、尾縣 貢3 (1. Nanavy株式会社、2. 筑波大学体育系、3. 福井工業大学)
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年齢が近い同性の兄弟姉妹は,特にライバル関係が強いことが先行研究で明らかにされている.一方で,世界で活躍している兄弟姉妹アスリートや,オリンピックに双方が出場,またはメダルを獲得している兄弟姉妹アスリートは多数いるものの,その相互関係のあり様についてわが国で言及されている研究はない.そこで本研究は,世界トップクラスの兄弟姉妹アスリートの競技キャリアにおける関係性と相互作用を明らかにすることを目的とした.研究対象者は,性別が同じである兄弟姉妹のアスリート4組から選ばれた8名であり,少なくとも1人または両者が同じ競技でオリンピックメダルを獲得していることを条件として,機縁法にて選定した.選定された兄弟姉妹アスリートは,2歳差の兄弟姉妹2組と3歳差の兄弟姉妹2組で校構成された.また,兄弟姉妹同士の関係性がより密になることが想定される個人スポーツに焦点を当てて実施した.調査方法は,事前に設計されたインタビューガイドに基づいて半構造化インタビューを採用した.得られた質的データは,KJ法を用いて分析した.分析結果から,年齢差,スポーツ固有のルール,同じ競技で競うことによるパフォーマンスの差,家族関係などが,兄弟姉妹アスリートの相互作用に影響を与えあっていることが明らかになった.結論として,本研究は世界トップクラスの兄弟姉妹アスリート間の複雑な相互関係の存在を明らかにした.これらの複雑さにもかかわらず,兄弟姉妹はこれらの課題に共に立ち向かい,心理的な成長を遂げ,関係性における心理的安全性を育んだことが明らかになった.また,世界トップレベルのアスリートの兄姉は,弟妹を兄弟姉妹ではなく,一人のアスリートと認識することによってこの心理的安全性も保たれることが示唆された.本研究によって,世界レベルで共に競技を行う兄弟姉妹アスリートの成功に寄与する重要な概念を得ることができた.

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