講演情報

[学校保健体育-A-08]中学校保健体育科教師Aの不安から自信への軌跡(教)第62回全国学校体育研究大会を舞台とした約1年半のアクションリサーチ

*木原 慎介1、佐藤 若2、佐藤 裕行3 (1. 東京国際大学、2. 山形県立南陽高等学校、3. 山形県教育局)
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学校教育をめぐる多様な社会課題の中で、教師の力量形成は継続的に求められている。そして体育教師を対象とした先行研究も限定的ではあるが存在している。本報告では、教職歴7年の中学校保健体育科教師A(以下、A)が全国学校体育研究大会(スポーツ庁及び公益財団法人日本学校体育研究連合会の主催事業)を契機として、保健授業の公開に向け葛藤しつつ不安を克服していく一連の過程をアクションリサーチによって描き出す。当初、Aにとっての大きな問題は保健授業に自信がないことだった。この問題の重要性を当該の指導助言者である筆者(大学研究者)、県教育委員会指導主事B、同大会研究部長Cらも共有し、授業の計画から日々の実践に至るまで当事者意識を持ちながら協働的に対話・観察・省察を重ねた。その過程でAは徐々に授業観を広げていった。特に転機となったのは、単元中盤での大きな失敗経験が彼の教材観に変容を促したことだった。メンバー間で話し合いを繰り返す中で、地域教材や生徒の主観的意見を活かした授業展開など新たなアイデアが生まれ、Aの授業は生徒との相互的なやり取りを重視するという従来とは異なる形へと変化した。また、授業中に「自分が見えている」という感覚や、生徒の「知識がつながる授業の楽しさ」も初めて味わった。結果としてAは保健授業への確かな自信を得るに至った。同時に、この成果を体育授業や他の保健体育科教師にも広げていくという新たな課題を見出した。一方、他のメンバーもそれぞれに新たな学びや課題を得た。例えば、現場との関わり方や広げ方、このプロセス自体が大会の遺産であり継続していくべきこと、教材観が指導スタイルに与える影響などである。本事例は、教師・授業者、指導主事、研究部長、大学研究者・指導助言者といった類似の立場にある人々が自らに置かれた文脈と重ね合わせて理解し、それぞれの現場での実践に適用する手助けになりうると考える。

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