講演情報
[06経-口-03]総合型地域スポーツクラブにおけるソーシャル・イノベーションプロセスと支援体制の関係性特定非営利活動法人取得クラブのインタビュー調査に基づく考察
*祐末 ひとみ1、長積 仁2 (1. 神戸親和大学、2. 立命館大学)
非営利組織(NPO)には、行政と協働し、政策を遂行する担い手としての役割が期待されている(山岡, 2011;Salamon, 1995 )。その一方で、資金・人材不足や運営基盤の脆弱性などの課題が指摘され(木村, 2018;スポーツ庁, 2023)、それを補う公的支援は、組織の個別的ニーズや成長段階を考慮せず、共通課題への一律的な対応が主流であった。今田(1997)は、支援体制を設計する上で、支援者側が一方的な支援を提供するのではなく、支援を受ける側の状況変化やニーズを把握し、柔軟に対応する支援システムの構築が重要であると述べている。また公的サービスにかかわる事業には、国家や政府などの理解と協力が不可欠だというSalamon(1995)の指摘を踏まえ、本研究では、NPO法人格を有する総合型地域スポーツクラブ(総合型クラブ)が手掛ける社会課題の解決に資する活動に焦点を当てる。その上で、総合型クラブの活動を谷本ら(2013)が提唱するソーシャル・イノベーションプロセスの概念に当てはめ、総合型クラブの取り組みが結実するまでの所轄行政との関係や行政支援の内実を明らかにし、支援方策や支援体制について検討する。本研究では、大阪府内でNPO法人格を有し、活動実態・運営形態・ガバナンス等の基準を満たした日本スポーツ協会に登録する12の総合型クラブを対象に、半構造化インタビューによってデータを収集した。調査は、クラブ運営に精通する関係者に対し、2023年8月から2024年2月までの期間に実施した。その結果、対象クラブの多くは、「社会課題の認知」や「活動の開始」には容易に至っていたものの、事業の安定化を図る取り組みや行政から事業を請け負うまでに至る総合型クラブは限定的であった。事業化の推進を図るためには、行政との協働やクラブが手掛ける公益活動に対する行政の理解が重要であることが示唆された。
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