講演情報

[12人-口-08]修行文化としての武術現代中国における道教と武当山武術の接点

*張 卿1、張 逸軒1 (1. 日本体育大学)
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道教における修行体系は、古来より坐禅、吐納、導引術といった内的修行法が重視されてきたが、武術もまた精神的修養の一環として位置づけられ、長年にわたり実践されてきた。なかでも武当山においては、道教思想と武術が密接に結びつき、独自の修行体系が構築されてきた。しかし、武術が宗教的修行の中でどのように位置づけられ、いかなる形で実践されているのか、その思想的背景および身体的実践に関する包括的な考察は、これまで十分には行われてこなかった。
現代中国において、武当山は国家的文化遺産や観光資源として広く認知されているだけでなく、武術が現代的なスポーツ文化の一部として制度化・普及される動きの中でも注目を集めている。その一方で、武当山は依然として道教修行の聖地としての機能を保持しており、宗教的実践と観光・スポーツ的利用とが交錯する場となっている。このような現代的文脈において、武術が修行の媒介としてどのように継承・展開されているのかを検討することは、伝統文化の再解釈および宗教実践の現代的変容を理解するうえで重要な意義を持つといえる。
本研究では、スポーツ人類学的な視座に立ち、フィールドワークを主要な調査・分析手法として位置づける。調査拠点としては、武当山道教協会、武術協会、武当山国際武術学院、太和宮、紫霄宮などを設定し、武術を修行の一環として実践している道士や修行者に対するインタビューを通じて、彼らの思想的認識および実践的知見の収集を試みる。また、道観や武館における日常的な稽古の観察を通じて、身体実践の具体的な様態を記録・分析する。さらに、研究者自身が武術修行に実際に参加し、身体的・精神的変容を内在的に体験することで、参与者の視点を取り入れた多角的な理解を目指す。

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