講演情報

[12人-口-10]応援団コスモロジー女性リーダーの誕生とその文化継承

*瀬戸 邦弘1 (1. 鳥取大学 高等教育開発センター)
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本発表では、応援団文化を近代に構築された日本文化のひとつとして注目する。応援団では継承される伝統を重んじ、護る事を中心的関心事とするため、時に時代錯誤と揶揄される事にもなるが、それは学校空間が育んだ「集合的記憶」とも考えられ興味深い。本発表では応援団が如何なる文化的価値を醸成してきたのか、特に器としての身体に注目するものである。
 現在、応援団はリーダー部、チアリーディング部、吹奏楽部という 3 部で構成されるがリーダー部はその中心的な存在となる。ところで、これまでリーダー部には「男性しか所属できない」という“しきたり”が全国的に認められ“ 聖域 ”として理解されてきたが近年その様子に変化が見られ多くの女性リーダー部員が誕生する事になるのだが、実はリーダー部という “ 聖域 ” には人類学でいうところの王権観に似た、もしくはそれに通じる世界観による安定と忌避があったように考えられ興味深い。
 たとえば応援団長とは役職を超えて団全体を象徴する存在と理解される。彼らは歌舞伎役者のように「名跡」を継ぐものでありそこで受け継がれてきた「歴史」と「誇り」、「魂」を継承する存在なのである。団長という存在を文化人類学的視点から視ればそれは応援団と言うミクロコスモスと団組織というマクロコスモスの紐帯として存在し「応援団コスモロジー」とも言うべき世界観の中心に位置する“ 王 ” なのである。
 ところで、“ 王 ” たる「器」になるためには、この国で育まれてきた歴史や文化の枠組みが求める枠組みに沿う事が求められそこには男女に求められる文化的役割も含まれ、女性がリーダーを行うべきか否かという議論の中心はいつもここにある。一方で日本社会も時代の流れとともに緩やかに変化し女性リーダーが誕生し応援風景も変化したが、女性リーダーの誕生とは社会の変化に伴い「器」としての身体への眼差しの基準が変化した結果なのである。

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