講演情報
[00哲-口-05]組み合わせ最適化問題の観点でスポーツ科学研究を視る
*齋藤 健治1 (1. 名古屋学院大学)
現在のスポーツ科学研究においても、大きな目標の一つは「競技力の向上」に資することにあるといえる。科学技術の進展に合わせて、スポーツ科学研究も進展し様々な知見が積み上げられてきたが、世界的に科学研究は停滞していると指摘があるのと同様に、スポーツ科学研究も広がりを見せている一方で、その進展は漸近状態にあるといえるのではないだろうか。ヒトを対象とするスポーツ科学研究では、帰納を繰り返すことが多く、その結論は常に蓋然性にとどまる傾向にあることが、結果として、本質的には同じような研究を繰り返すことになる原因の一つではないだろうか。スポーツ科学研究においては、要因と水準を決定し、できるだけ少ないケース数で効率よく実験・分析を行う実験計画法のデザインが採用されることが多い。しかしながら、ヒトの現象を対象にした場合、このような「ケース」を縮小する方法は、帰納により結果の「蓋然性」を強化することはできても、演繹的推論の前提となる定理のようなものを見つけることには近づかないのではないだろうか。一方で、ヒトを対象としたスポーツ科学研究を、組み合わせ最適化問題として見直してみると、実験計画法でいうところの「要因」「水準」の組み合わせが、本質的に組み合わせ爆発を起こすことになり、そのままでは現実的に解けない問題になるのではないかと思われる。つまり、効率性を考慮した実験計画法を採用することは、解が求まるように「緩和」する手段であり、これは組み合わせ最適化問題の探索区間、探索ルートを縮小して現実的な何らかの解を求めるという図式と同等と見ることもできる。結果として、時と場所を変え、別の緩和法により本質的には同じような実験が繰り返されるという事につながるのではないかと考えられる。
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