講演情報

[11教-口-24]静水での小児の落水に関する実験的研究

*栗栖 茜1、藤田 恵理2、横澤 喜久子3、平工 志穂3、天野 勝弘4、中島 弘毅5 (1. 日本赤十字看護大学附属災害救護研究所、2. 帝京大学、3. 東京女子大学、4. スポーツパフォーマンスデザイン⁷、5. 松本大学)
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背景:日本では毎年多くの人が水難事故で命を落としており、特に子どもの溺死が不慮の事故の上位を占めている。水中での動きや溺水のメカニズムを解明することは、事故防止や救助法の向上に不可欠である。しかし、これまでの研究は、水中での具体的な動態について十分なデータは存在しない。 目的:本研究の目的は、5歳児相当の体格を持つダミーを用いて、水中での動態を静水環境で測定し、溺水時の沈降や浮上のメカニズムを明らかにすることである。これにより溺水事故時の対策や指導法に科学的根拠を提供することを目指す。 方法:屋外プールを使って静水での小児の落水に関する実験を、5歳児に代わるダミーを用いておこなった。ダミーとしては比重1前後に調整した20リットルポリタンクを用いた。ダミーの水中での位置を正確に測定するために小型で軽量な水深計を用いた。 結果:浮力材を装着せずに比重を人の呼気状態と同じ1.05に調整して水面でリリースしたダミーはゆっくりと水底に沈むことが立証された。また、同じダミーに0.5kgf、1kgf、2kgfの空のペットボトル、4kgfのライフジャケットをそれぞれ装着して高度12cm、45cm、65cmより水面に落下させると全例、浮力材を装着しているにもかかわらず着水直後に水中に沈んだ。浮力が少ないほど水面から深く沈み水面下に沈んでいる時間も長かったが、いずれにしても水面に浮上することが立証された。0.5kgfという少ない浮力でも水面に浮上するまでより長い時間がかかるものの水面まで浮上することができた。 考察:今回の実験では0.5kgfの浮力を装着したダミーは65cmの高度から落水しても水面に浮上することができた。したがって、落水した場合でも衣服を着ている場合には、一度は水中にもぐるものの必ず水面に浮上することが予想される。今後は着衣による浮力の大きさと持続時間を実験で明らかにする必要がある。

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