講演情報
[08測-口-07]努力度に基づく力発揮の個人差と現在の運動習慣との関係の検討
*菅谷 亮介1、林 容市2,1 (1. 法政大学大学院スポーツ健康学研究科、2. 法政大学文学部心理学科)
【背景】合目的な力発揮を行うには,目標とする出力(目標値)に対して実際の出力(測定値)を一致させる必要がある.この一致度を高めるうえで重要な役割を果たすのが「努力度」である.努力度とは,動作発揮時に生じる主観的な感覚であり,実際の力発揮はこの感覚に基づいて行われる.しかし,努力度に基づく力発揮の精度には対象者間でばらつきがみられ,その要因として,偶然誤差に加え,努力度に基づく力発揮の巧拙における個人差(以下,「精度の個人差」とする)が示唆されている.努力度の見積もりには,力発揮の準備や開始に関与する脳領域(例:補足運動野)の活動が関連し,生成される努力度の大小は過去や現在の運動経験に応じて可塑的に変化する可能性がある.したがって,運動経験の差異が精度の個人差を生む一因と推察される.そこで本研究では,一致度のばらつきにおける精度の個人差の影響を統計的に明らかにし,その個人差に対する運動習慣の影響を分析した.【方法】青年男性30名(23.9±2.8歳)を対象に,最大握力の25%,50%,75%を目標値とした握力課題を実施させた.分析1では目標値と測定値との差の絶対値(%)を従属変数,目標値(3水準)を独立変数,精度の個人差を変量効果とした混合効果モデルを構築した.分析2では分析1に運動習慣(あり/なし)を加えてモデルを再構築した.各モデルにおける一致度のばらつきに対する精度の個人差の寄与割合をICCで評価した.【結果】分析1では,精度の個人差が一致度のばらつきの約44%を説明していた.分析2では,精度の個人差が約41%を説明し,運動習慣がこの個人差を説明する割合は約3%であった.【結論】目標値と測定値の一致度のばらつきの約半分は,精度の個人差に起因していたが,運動習慣はこの個人差に大きな影響を及ぼさない可能性が示唆された.
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