講演情報
[05バ-口-10]男子体操競技ゆかにおける後方伸身2回宙返り3回ひねり(Shirai3)の成功試技・失敗試技の動作比較
*白井 健三1、畠田 好章1、中瀬 卓也1、有井 さやか1、河鰭 真世1、阿江 数通1 (1. 日本体育大学)
男子体操競技では2025年から施行されたルールにおいて、後方伸身2回宙返り3回ひねり(以下:シライ3)を含む後方伸身2回宙返り系の難度が前ルールから上がり、実施する選手が増加している。しかしシライ3は、過去5年の国際大会をみても実施した選手は1人のみであり、希少価値の高い技である。世界的に実施数の少ないシライ3の成功要因を明らかにすることは、ゆかの難度点向上につながると考えられる。本研究では、男子体操選手のゆかにおけるシライ3の成功試技と失敗試技の動作をバイオメカニクス的観点から比較することで成功要因を明らかにすることとした。対象者は国際大会においてシライ3の成功経験を持つ五輪金メダリスト1名(年齢:26歳、身長:164㎝、体重:55㎏、競技歴:23年)である。3次元動作解析システムカメラ15台を用いて得られた3次元データから重心速度、関節角度および角運動量などのデータを算出した。分析範囲は後転とび開始時からシライ3の動作終了時までとした。また審判有資格者により採点を行い、実施減点が1.0以下の試技を成功試技、1.0以上の試技を失敗試技とした。離地時点における成功試技と失敗試技の動作を比較した結果、重心速度および角運動量については顕著な差はみられず、関節角度については、右肩関節の屈曲伸展および内外転角度においていずれも5.3度の差がみられた。また体幹の左右回旋角度において4.0度の差が見られた。加えて、重心最大高については、成功試技が失敗試技よりも0.05 m大きかった。したがって、離地時に体幹の旋回を減らしひねり開始を遅延させていること、右肩を高い位置で外転させることによって、弾性力と反力を持ったゆかのバネをより効果的に利用できたと考えられる。その結果として、空中局面における最大重心高が増加して、接地において減点の少ないシライ3の実施を可能としていることが示唆された。
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