講演情報

[02社-口-02]スタジアムの公共性をめぐるポリティクスクリーブランド市のゲートウェイ・プロジェクト

*高部 厳輝1、中田 健斗1 (1. 明治大学大学院教養デザイン研究科)
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サッカースタジアムの建設をめぐって栃木市で住民訴訟がおこり、運営会社への「固定資産税の免除」が差し止められたことは記憶に新しい。当時(2022年)の報道によれば、スタジアムの公益性を主張する市に対して、裁判長は「強い公益性があるものとは到底認められない」と結論づけたという。この事例に典型的であるように、スタジアム建設には少なくない反対が存在し、地域住民と行政の間にある種の摩擦が生じている。 日本の研究において、スポーツ・スタジアムへの公共投資の理想像としてしばしば引き合いに出されるのが、アメリカの事例だろう。アメリカではスタジアムへの公的資金の投入が地域住民に歓迎されているとする論調である。しかし、アメリカには日本と大きく異なる事情も存在する。第一に、数多くのプロ球団によるフランチャイズ移転をめぐる都市間の競合である。各都市は球団の誘致に多大な努力―新規の課税も珍しくない―を払い、その誘致に失敗した都市ではエクスパンションチームと呼ばれる新球団が創設されることさえある。第二にはしかし、そのような誘致の努力が常に地域住民に支持されるわけではなく、多くの住民投票が実施され、その結果、公的資金の投入が拒否される場合も少なくない。全米では1990年から2023年にかけてスタジアムとアリーナの提案に対して57の住民投票が実施され、そのうち22の提案が否決されている。 こうした事実は、アメリカにおいてもスタジアム建設への公的資金の投入をめぐっては、ある種のポリティクスが存在していることを示唆している。スタジアム建設は、地域経済を活性化させるのか、それともその経済効果は限定的なのか。スタジアム建設による受益者は地域住民なのか、それとも球団を所有する富裕層なのか。本報告では、都市の再開発と密接に結びついた成功例として取り上げられることが多いクリーブランド市の事例について検討する。

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