講演情報

[03心-口-05]キリスト教を信仰するアスリートが競技生活を続けていくためのプロセス

*山本 築1、高井 秀明1 (1. 日本体育大学)
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宗教は、古代から世界中で文化や社会に深く根付いてきたものであり、信仰や宗教観は個人の思想や人生観の根本に位置している(島田、2019)。キリスト教は1549年に日本に伝来して以来、冠婚葬祭やクリスマスといった形で日本文化に深く影響を与えている(文化庁、2023;深津、2006)。しかし、このような文化的な受容がある一方で、キリスト教の教えや思想に違和感を抱く人もおり、個人の宗教的信念としてキリスト教を信仰する人々が誤解や偏見に直面することも少なくない(石川、2019)。Ronkainen et al.(2020)により、宗教はアスリートの競技生活に影響を与え、彼らのキャリア形成や幸福に大きな影響を及ぼす可能性が指摘されている。このような背景から、キリスト教を信仰するアスリート(以下、クリスチャンアスリート)は競技生活において特有の課題を抱えているものと考えられる。本研究では、クリスチャンアスリートの宗教的信念が競技生活に与える影響について質的に検討することを目的とし、クリスチャンアスリート11名に半構造化インタビューを行った。分析には、社会的相互作用やプロセスを明らかにすることに適している修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(Modified Grounded Theory Approach:M-GTA)を採用した(木下、2003)。その結果、クリスチャンアスリートが競技生活を続ける中で、世の中の価値観とキリスト教の教えとの間に【価値観がなじまない】という経験をしていることが明らかになった。一方で、宗教的慣習の実践を通して、競技に対する目的意識が明確になり、【神のためのスポーツ】という意識が形成されていくことも確認された。つまり、クリスチャンアスリートの信仰が競技生活に影響を与えると同時に、競技生活での経験が信仰を深める契機にもなっていることが示された。

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