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[03心-口-06]「奚般氏著心理学」と「倍因氏心理新説」の体育心理学からみた史的研究

*楠本 恭久1、高井 秀明1、大久保 瞳1、北橋 達朗1、坂部 崇政2、藤本 太陽3 (1. 日本体育大学、2. 京都教育大学、3. 大阪産業大学)
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『Mental Philosophy』は1869(明治2)年にJoseph Haven(1816-1874)が著した書物であり、西周は1875(明治8)年にこれを『奚般氏著心理学』として翻訳している。これがわが国で出版された最初の心理学書であることは周知されている。これに対して、1868(明治元)年にAlexander Bain(1818-1903)が著した書物の『Mental Science』は、1882(明治15)年に井上哲次郎が『倍因氏心理新説』として抄訳して出版している。したがって、『Mental Science』は『Mental Philosophy』と近い年代に出版された作であり、その史的研究を行なうことは心理学の起源を探るために価値があるものの、それらの先行研究は限られている。例えば、鈴木(2007)は、兵庫県三田市立図書館調査相談室を訪問しており、同地での調査の際、「郷土先哲顕賞会」がまとめた『川本幸民関係資料調査報告書(平成8年3月)』のファイルの中に昭和18年6月に開催された「川本幸民遺品展示会」の陳死資料の1つとして、『心理学 川本清一訳 全13分冊』を確認している。そして、それらの資料をもとにしながら、Alexander Bainの心理学の特徴に迫っている。ちなみに、Alexander Bainの『Mental Science』の抄訳書である、井上哲次郎の『倍因氏心理新説』は、4巻から構成されている。例えば、第1巻では、第1章 総論、第2章 感覚、第3章 味覚、第4章 嗅覚、第5章 触覚、第6章 聴覚、第7章 視覚の見出しが示されており、第1巻は知覚に関係する内容が中心であることがうかがえる。本研究の詳細は、発表当日に報告させていただくのだが、井上哲次郎の『倍因氏心理新説』の史的研究は、現代の体育やスポーツ、健康に関係する「研究の立ち位置を再考する」うえで有効な機会となるだろう。

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