講演情報
[05バ-ポ-15]競泳スタートの入水時に生じる流体力定量化の試み
*山川 啓介1、工藤 重忠1、武田 理2 (1. 筑波大学、2. 筑波大学大学院)
競泳競技では,スタートの入水時に泳者が受ける水の流体力によって大きな減速が生じるため,この流体力の大きさがスタートパフォーマンスを左右する指標となる.そこで本研究では,スタートの入水時に泳者が受ける水の流体力を定量化する新たな方法論を提案し,事例的に流体力の定量化を試みることを目的とした.実験には男子大学競泳選手1名が参加した.水中で対象者が受ける浮力を算出のために,3Dボディスキャンを用いてストリームライン姿勢時の身体形状データを収集した.その後,実験試技として,スタート台から全力で飛び込み,水中キックなしで10 mを通過する試技を行った.試技中の重心加速度は慣性センサ式モーションキャプチャシステムを用いて算出した.本研究では,泳者が受ける水の流体力を定量化するために,入水時の身体に関する運動方程式を立て,身体重量,身体重心加速度,身体の浸水部分に働く浮力の推定値を用いて身体に生じた正味の流体力を計算した.結果として,本研究の方法論で推定した流体力の合力は,身体が完全に入水するまで増加し,最大で774 Nに達した.この値は,先行研究でストリームライン姿勢時に計測された受動抵抗力(流速1.0―1.5 m/s)に対して8~10倍大きい値であった.本研究において,流体力が最大に達した際の重心速合成度が約4.0 m/sであった.本研究とストリームライン姿勢の先行研究との速度の違いを踏まえると,泳者が受ける水の抵抗力(受動抵抗力)は速度の2乗に比例して増加することから,本研究の方法論で推定した流体力は概ね妥当な範囲であったと考えられた.
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