講演情報
[10保-ポ-04]輻射熱の有無が同等湿球黒球温度環境での歩行時の体温調節反応および温熱感覚におよぼす影響
*山下 直之1、永井 暉之2、和田 健太郎2、吉村 颯馬2、久米 雅3 (1. 京都工芸繊維大学、2. 京都工芸繊維大学大学院、3. 京都文教短期大学)
歩行中に輻射熱に暴露された際の体温調節反応や温熱感覚に関する知見は限られている.そこで本研究では,輻射熱の有無が同等湿球黒球温度(WBGT)環境での歩行時の体温調節反応と温熱感覚におよぼす影響を検討することを目的とした.対象者は13名の若年男性であった.対象者の背部に輻射熱を照射する日射有条件と輻射熱無しの日射無条件ともにWBGTが約28℃になるように設定し,トレッドミル上を時速5 km/hで1時間歩行した.その間に直腸温,皮膚温,胸・背部の局所発汗量および前・後面の温熱感覚を測定した.さらに実験前後の体重変化から体重減少量を算出した.運動後の直腸温の変化率は2つの条件ともに約0.5°C上昇し,有意差はなかった(p = 0.29).平均皮膚温の変化率では日射有条件で1.8°C上昇したが,日射無条件では0.5°Cの上昇であった (p < 0.001).また,胸部発汗量に条件間に有意差はなかったが(p ≥ 0.06),背部局所発汗量では日射有条件が日射無条件に比較して有意に多かった(p ≤ 0.03).しかし,体重減少量については条件間に有意差はなかった(p = 0.46).また,背部の温熱感覚は日射有条件が日射無条件に比較して有意に暑いと感じていたが(p ≤ 0.02),腹部の温熱感覚は条件間に有意差はなかった(p ≥ 0.59).これらのことから,輻射熱暴露された部位の皮膚温が上昇することで発汗量も増大し,局所的により暑く感じるものの,他の部位ではその影響はないことが示唆された.本研究の結果から,WBGTが同等であっても輻射熱を受ける部位では皮膚温や局所発汗量が増加し,温熱感覚も悪化することが明らかとなった.したがって,輻射熱のある暑熱環境では温熱感覚の改善に輻射熱を受ける部位への暑熱対策の必要性が示唆された.
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