講演情報
[11教-ポ-01]水泳領域における「心得」の指導内容の検討(第3報)小学校学習指導要領の「心得」の変遷に焦点化して
*稲垣 良介1 (1. 岐阜聖徳学園大学)
本研究の究極的な目的は、授業を設計する際の基盤となる「心得」の内容を明らかにすることである。第1報は、現行学習指導要領における「心得」の記述的特徴について、第2報は、「心得」が対照する英訳版における英語表現から、その多義性について報告した。本報告は、昭和30年以降の学習指導要領の「心得」の変遷を明らかにすることを目的とした。昭和33年改訂学習指導要領の「心得」は水遊び・水泳における具体的で列挙的な行動規範が明記され、それらは「知らせる」、「理解させる」のもとされる。「心得」は、教師が教え、児童が守るべき“生活上の約束・注意事項”としての性格が強く、知識・理解よりも遵守すべき行動様式として位置づいている。昭和43年改訂学習指導要領の「心得」は、水泳場の有無などの環境条件に左右されることなく、「必ず指導するもの」として明記された。これにより、安全に関する認識・判断・行動規範は必ず教えることが明確になり、「心得」は技能学習を下支えする“安全の基盤”として位置づいた。昭和52年及び平成元年改定学習指導要領の「心得」は、個別の項目の羅列から、「プールの使用規則を守ること」「清潔に注意することなど」のように包括的、要約的な表現へと変化した。つまり「心得」は、“覚えるリスト”から理解し、判断して守る原理へと性格を変えていることが分かる。平成10年以降の学習指導要領の「心得」は、単独でなく「仲よく運動する」「協力する」「友達の考えを認める」といった社会性、協働性、態度面の内容と結びつけて示された。「心得」は、学習指導要領の改訂ごとに、具体的・命令的な行動規範(昭和30年代)、安全教育としての必須内容(昭和40年代)、包括的・理解重視の原理(昭和50〜60年代)、態度・社会性・判断力と結合した資質(平成以降)のように変遷していることが示唆された。
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