講演情報

[合同-S-2]体育科授業研究を通した教師のエージェンシーと力量形成

*鈴木 聡1 (1. 東京学芸大学)
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<演者略歴>
小学校教諭を経て、東京学芸大学准教授、同教授。現在、東京学芸大学副学長。体育科教育学、教師教育を専門とし、「教師の成長における体育科授業研究の機能」、「体育科授業研究における教師エージェンシーの育成と実践的力量形成」を主な研究テーマとしている。博士(教育学)。
本提言では、これからの学校教育において保健体育教師および小学校で体育を中心研究教科とする教師に求められる力量形成について体育科教育学の立場から検討する。社会の変化に応答する学校教育において、子どもの実態を捉え、同僚と協働しながら学びを構想し、教育の意味や方法を問い直す力は、すべての教師に求められる。しかし、保健体育教師の専門性には、他教科には還元できない独自性がある。
 体育は身体を通して学ぶ教科であり、子どもの運動経験、技能差、身体への意識、仲間との関わりが授業に現れる。したがって保健体育教師には、運動技能や知識を教える力に加え、運動やスポーツの教材価値を見抜き、一人ひとりが身体を通して学びに参加できる場を創る力が求められる。苦手意識や不安をもつ子どもを含めて共に学ぶ場を組織することは、共生やウェルビーイングを具体化する体育科の課題である。
 体育科教育学の立場からは、社会的課題をそのまま授業に持ち込むのではなく、子どもの身体経験、教材の価値、学びの過程に即して授業実践の問いへと変換することが重要である。本提言では、力量形成を考える視点として、体育科授業研究における教師エージェンシーに着目する。教師エージェンシーとは、教師個人の主体性に限定されず、子どもの実態、運動の特性、同僚との対話、授業研究の場での関係性の中で、実践を意味づけ、問い直し、授業を創り出す力である。
 これまでの研究から、教師は若手期には指導技術の向上を求め、中堅期には「何を、なぜ教えるのか」という問いを深め、ベテラン期には自己改革の契機として授業研究に関わる傾向が見られた。その背景には、教師の思いや信念を揺さぶる「重要な他者」との出会いが存在する。以上を踏まえ、体育科授業研究を、教師が社会的課題を授業実践の問いへと変換し、身体を通した学びの価値を再構成する場として捉え直し、これからの保健体育教師の力量形成を論じる。

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