講演情報
[10401-07-02]再骨折による痛みの破局的思考と抑うつに改善が見られ,ADLが向上した事例
*松澤 はるね1、石川 恵美子1、中尾 桃果1 (1. 青葉さわい病院)
キーワード:
破局的思考、うつ状態、ADL
【はじめに】
腰椎椎体骨折後,入院中新たに胸椎椎体骨折を受傷した事例を担当した.疼痛が強く,不安や焦燥感から抑うつ症状を呈し,リハビリテーションへの意欲が低下していた事例に対し,精神面へアプローチし,破局的思考と抑うつの改善によってActivities of Daily Living(以下,ADL)向上が得られたため,以下に報告する.今回,事例には発表に際して書面にて同意を得た.
【事例紹介・評価】A氏,80代,女性,病前生活は息子夫婦と2世帯住宅に居住.日中は独居であった.機能的自立度評価法(以下,FIM)は47点,MMSE-J精神状態短時間検査 改訂日本版(以下,MMSE-J)では,17点であった.痛みは腰背部に起居動作NRS10/10であり,端座位保持は困難.老年期うつ病評価尺度(以下,GDS)は10点,うつ性自己評価尺度(以下,SDS)は49点,Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS)45点と破局的思考が強く,精神機能の低下が認められた.
【介入経過】入院時,評価結果や悲観的な発言があり,精神的ストレスの軽減,疼痛緩和,起居動作の介助量軽減を目標とした.初期より体幹の筋力トレーニングや起居時に誘発しやすい腰部の過緊張を防ぎ疼痛の出ない起居動作訓練などの機能訓練のほか,多職種連携によるポジティブフィードバックや,声掛けによるできていることへの意識づけ・気分転換になる作業の導入を図った.中期では新しい動作習得への不安感が著明であり,動作全般が慎重で,自信喪失に繋がりやすい状況であった.アプローチではネガティブな発言に対しリフレーミングを用いてポジティブな形で残るよう声掛けにも配慮し,自発的な会話・笑顔が増加した.後期には前向きな発言が増加した.
【結果】FIM47→86点,痛みは起居動作NRS 2/10,臀部痛NRS4/10となった.精神機能はGDS10→6点,SDS49→42点,PCS45→27点とうつ症状と破局的思考の改善が得られた.また,退院後の生活に対し,希望が聞かれるようになったが,慢性的な疲労感は残存した.
【考察】本症例は,痛みの破局的思考により抑うつ症状が認められた.村上らは「ADL能力の向上が高齢者を抑うつ状態へと陥るのを防げる,あるいは意欲の向上が高齢者のADL能力向上に影響を与える」と述べる.疼痛緩和や実動作の獲得による現実的な成功体験の積み重ねや,気反らし反応を用いた気分転換作業を導入したことで,うつ症状と破局的思考の改善が認められた.その結果,退院を見据えたリハビリテーションへの意欲が向上し,ADL能力の改善に至ったと考える.
腰椎椎体骨折後,入院中新たに胸椎椎体骨折を受傷した事例を担当した.疼痛が強く,不安や焦燥感から抑うつ症状を呈し,リハビリテーションへの意欲が低下していた事例に対し,精神面へアプローチし,破局的思考と抑うつの改善によってActivities of Daily Living(以下,ADL)向上が得られたため,以下に報告する.今回,事例には発表に際して書面にて同意を得た.
【事例紹介・評価】A氏,80代,女性,病前生活は息子夫婦と2世帯住宅に居住.日中は独居であった.機能的自立度評価法(以下,FIM)は47点,MMSE-J精神状態短時間検査 改訂日本版(以下,MMSE-J)では,17点であった.痛みは腰背部に起居動作NRS10/10であり,端座位保持は困難.老年期うつ病評価尺度(以下,GDS)は10点,うつ性自己評価尺度(以下,SDS)は49点,Pain Catastrophizing Scale(以下,PCS)45点と破局的思考が強く,精神機能の低下が認められた.
【介入経過】入院時,評価結果や悲観的な発言があり,精神的ストレスの軽減,疼痛緩和,起居動作の介助量軽減を目標とした.初期より体幹の筋力トレーニングや起居時に誘発しやすい腰部の過緊張を防ぎ疼痛の出ない起居動作訓練などの機能訓練のほか,多職種連携によるポジティブフィードバックや,声掛けによるできていることへの意識づけ・気分転換になる作業の導入を図った.中期では新しい動作習得への不安感が著明であり,動作全般が慎重で,自信喪失に繋がりやすい状況であった.アプローチではネガティブな発言に対しリフレーミングを用いてポジティブな形で残るよう声掛けにも配慮し,自発的な会話・笑顔が増加した.後期には前向きな発言が増加した.
【結果】FIM47→86点,痛みは起居動作NRS 2/10,臀部痛NRS4/10となった.精神機能はGDS10→6点,SDS49→42点,PCS45→27点とうつ症状と破局的思考の改善が得られた.また,退院後の生活に対し,希望が聞かれるようになったが,慢性的な疲労感は残存した.
【考察】本症例は,痛みの破局的思考により抑うつ症状が認められた.村上らは「ADL能力の向上が高齢者を抑うつ状態へと陥るのを防げる,あるいは意欲の向上が高齢者のADL能力向上に影響を与える」と述べる.疼痛緩和や実動作の獲得による現実的な成功体験の積み重ねや,気反らし反応を用いた気分転換作業を導入したことで,うつ症状と破局的思考の改善が認められた.その結果,退院を見据えたリハビリテーションへの意欲が向上し,ADL能力の改善に至ったと考える.