講演情報

[10401-07-03]中心性脊髄損傷患者の強みに焦点化した関わりにより,客観・主観的評価としてADL・QOL向上に繋がった事例

*高田 七彩1、石川 恵美子1 (1. 青葉さわい病院)

キーワード:

中心性脊髄損傷、健康関連QOL、主観

【はじめに】先行研究では,強みに介入した事例ではクライアント(以下,CL)の意欲を引き出しやすく生活機能が上がりやすいと述べられている.今回,CLの強みに焦点化して介入することでActivities of Daily Living (以下ADL)が向上し,自宅退院に繋げることができたため,以下に報告する.今回の事例報告について,CLから書面にて同意を得ている.【事例紹介・評価】A氏,60代,女性.夫と二人暮らし.家庭内では主婦の役割であるが,事例が立ち上げたサロン経営のトップマネジメントをされていた.事例の希望は,「身の回りのことができるようになりたい」であった.現病歴はX年Y月Z日,夫婦で旅行していた際にガードレールを破って崖から転落し受傷.その際,同乗の夫を亡くしている.診断名は中心性脊髄損傷と外傷性くも膜下出血,全身の骨折があった.機能的自立度評価法(以下,FIM)は71点,痛みは左肩関節に鈍痛・右肩関節,腰背部~左下肢後面に中等度の放散痛があった.高齢者用うつ尺度短縮版(以下,GDS)4/15,EuroQol 5 dimensions 5-level(以下,EQ-5D)を使用した面接では,日常生活において不便さを感じており,痛みに固執しやすく運動には消極的である部分が課題と考えた.利点は不安やうつ症状は見られずリハビリに意欲的であり,CL自身の病態理解が良好であったことが挙げられる.【介入経過】評価結果より,“強みに焦点を当て左上肢,右下肢,体幹の機能向上を図りながらADLの獲得を目指す“を介入方針として,左上肢,体幹の筋力トレーニング,痛みの出ない動作の指導や環境設定を行った.身体機能面の初期は右上肢・左下肢麻痺に加え全身的な筋力低下あり座位訓練は車椅子上で行っていたが,中期に装具を使用し,短時間の端座位保持可能となった.後期には装具使用せず座位保持可能となり,左上肢運動時疼痛消失した.精神機能面では初期に「今は明るく振舞えているけど,いろいろ思い出すこともあるね」「孫のためにリハビリを頑張っていきたい」と話されており,後期には他患との交流も活性化し,「退院後は今よりも動かなくなっちゃうだろうから何か趣味を探していこうと思う」と余暇活動の希望も聞かれるようになった.【結果】FIMは71→101点と歩行は伝い歩きにて見守りへ変化,GDS 4→3点,EQ-5Dでは「普段の活動」以外の項目で改善がみられた.右肩関節,腰背部~左下肢後面に軽度の放散痛が残存した.   【考察】先行研究ではCLのリハビリテーション意欲を高めるための動機づけの要因として「回復の実感」が重要であると述べている.今回CLの強みに対して焦点化し,本人の残存機能を活かしながら少しずつできることを増やす実践により客観・主観的評価どちらも改善された.またこれらの介入により,リハビリテーション意欲の維持も可能となった.障害に対して機能訓練には限界があり,強み=残存機能に介入することで変化が期待できることが示唆された.