講演情報

[10401-07-06]作業療法の事例検討ツールCROT-Ⅱの導入と活用の試み
Introduction and use of the occupational therapy case review tool CROT-II

*椎野 紫苑1、藤本 一博1 (1. 茅ヶ崎中央病院)

キーワード:

クリニカルリーズニング、作業療法プログラム、予後予測

【はじめに】作業療法(OT)における事例検討は,臨床推論を深め,より適切な介入方法を導く重要な手段である.しかし,資料作成に1週間程度の期間を要することや,検討時間が1時間と長引くことも課題であった.そこで,新たな事例検討ツール「CROT-Ⅱ(Clinical Reasoning OT Tool-Ⅱ)」を導入し,施設における活用方法を検討した.本ツールは「根拠検討用」「作業経過検討用」「導入方法検討用」の3つのフォーマットを備えており,短時間で体系的な議論が可能である.本発表では,CROT-Ⅱの導入過程とその効果について報告する.なお,本発表は院内倫理審査を経ている.
【導入方法】CROT-Ⅱの導入にあたり活用方法を検討した.まず,従来の事例検討の進め方を振り返り,検討に要する時間や議論の課題を整理した.その結果,事例の焦点が明確にならないまま議論が進むことや,院内のOT(参加者)の経験値によって議論の方向性にばらつきが生じることが問題点として挙げられた.次に,CROT-Ⅱの3種類のフォーマットの特徴を踏まえ,どのように活用すれば効率的に議論できるかを検討した.検討会を実施するにあたり,筆者(事例提供者)が事前にフォーマットへ記入し,議論の焦点を明確にする方法を採用した.事例の情報整理からフォーマット記入までの時間を計測し,参加者の負担や実施可能性についても評価した.事例検討会は,フォーマットの内容に沿って順序立てて議論を進める形式とした.これにより,検討の流れが整理され,参加者が的確な意見を述べやすい環境の構築を試みた.また,検討時間を短縮しながら,具体的なアドバイスを得られるかを評価した.
【結果】フォーマットの記入には平均で約1~3時間を要するが事前にフォーマットを記入することで議論の焦点が明確になった.参加者はOT1~20年目以上の10名程度で実施した.事例検討会は平均約20分で終了し,短時間で必要な視点が得られることが確認された.また,CROT-Ⅱのフォーマットに沿うことで各OTの意見が明確になり,議論が構造化されるため若手の先輩からもアドバイスを得やすい環境が構築された.さらに,事例提供者にとっても,発表の負担が軽減されることで,議論に集中しやすくなった.
【考察】本研究では,CROT-Ⅱを活用することで事例検討の効率化と実用性の向上が確認された.特に,事前準備に時間を要するものの,その分,検討会が短時間で的確に進行し,実践的な視点が得られる点は大きな利点であった.さらに,フォーマットが議論の道筋を示すため,参加者が自らの経験に基づいて意見を述べやすく,チーム内での情報共有が円滑になることが分かった.また,CROT-Ⅱを活用することで,積極的に議論に参加できる点も有用であった.