講演情報

[10401-07-07]CROT-RからCROT-R Ver2への改訂~施設適応性の向上~

*藤本 一博1 (1. 茅ヶ崎中央病院)

キーワード:

クリニカルリーズニング、作業療法教育、作業療法モデル

はじめに
 作業療法の専門性を適切に表現し、臨床実践の質を高めるために、レジュメ作成は教育的に有効である。しかし、近年のパラダイムシフトにより、従来のフォーマットではリーズニングの可視化が十分に機能せず、新しい枠組みに不慣れな臨床家も多いことが、適切な介入計画の策定を妨げる要因となっていた。これらの課題を解決するために、物語的、科学的、実際的、倫理的、相互交流的という5つの視点を統合したCROT-Rが開発され、作業療法士の専門的思考の整理とクライエント中心の実践を支援するツールとしての有用性が示された。しかし、施設ごとの方針に適応できる柔軟な構造や、リーズニングをより直感的に適用できる工夫が求められた。そこで、フィードバックを基にCROT-R Ver2へと、より実践的なフォーマットへと改訂した。本論は院内倫理手続きを経ている。
目的
 本研究の目的は、CROT-RをCROT-R Ver2へ改訂し、作業療法士が各施設の運用に合わせて介入評価やリーズニングのプロセスを柔軟に適用できるようにすることである。
方法
 改訂にあたり、前回の使用感調査を基に、①リーズニングの柔軟性向上、②リーズニングの理解促進、③施設適応性の強化の3点に重点を置いた。まず、評価、目標設定、介入戦略、成果の分析の4段階構造を基本としつつ、施設の方針に応じて項目を選択・並び替えできる構造とした。次に、リーズニングの枠組みに不慣れな臨床家や学生でも活用しやすいよう、各視点の説明を簡潔にまとめたガイドや具体的な記入例を添付し、直感的に使用できるようフルバージョン、簡易版、評価フォーマットの3種類を提供し、工夫した。
改訂の内容
 CROT-R Ver2では、クライエント中心、多職種連携の促進、エビデンスベースの実践支援を残しつつ、柔軟性向上、施設適応性の向上、リーズニングの理解促進を重視した。特に、ガイドラインや記入例を整備し、実践への導入を容易にした。また、クライエントの個別性を反映しやすいよう、選択式項目を増やし、臨床現場のニーズに応じた適応を可能にした。
考察
 CROT-R Ver2は、作業療法士のリーズニングを整理し、専門性を可視化するとともに、異なる施設の運用方針に対応しやすい柔軟なツールとして改訂した。特に、施設ごとに必要な項目を選択できる構造とすることで、多様な環境での活用が可能となり、多職種連携の視点からも有用な資料として機能することが期待される。また、新しいリーズニングの枠組みに不慣れな臨床家にとっても、理解しやすいフォーマットを提供することで、実践への導入を円滑にし、作業療法の専門性を広く浸透させることが可能となった。今後は、CROT-R Ver2の有効性をさらに検証し、異なる施設での活用事例を収集しながら、さらなる改良を進め、専門性の向上や可視化を支援するツールとしての発展を目指したい。