講演情報
[10408-14-01]退院後の生活場面を想定しつつ多面的な適性評価を用いた運転支援により運転再開が可能となった症例
*小室 綾音1、宇都宮 裕人1、吉武 信治1 (1. イムス横浜東戸塚総合リハビリテーション病院)
キーワード:
自動車運転支援、作業療法、脳血管障害
【初めに】左被殻出血を発症し右片麻痺を呈した症例に対し,運転再開にむけ支援を実施した.初回の支援では神経心理学検査,J-SDSA,運転シミュレーター(以下:DS)を行った。今回は,運転見送り後からの本人への理由の共有に加え,他職種と連携をとりながら運転前後の作業を踏まえた評価・運転支援を行い,再評価時に運転再開が可能と判断されるまでの一連の工夫について報告する.発表に関して,本人に説明を行い,同意を得ている.【症例紹介】50歳代男性.28病日に当院回復期リハビリテーション病棟へ入院.本症例は当院の運転支援の基準である,日常生活動作の自立および屋外歩行の獲得見込みであったため,67病日より運転に関与する評価を実施した.また再評価は108病日より実施した.【OT評価】運転は仕事と父親の介護に使用し,「運転は仕事にも生活にもかかせない」と語った.身体機能は,BRSは上肢Ⅳ,手指Ⅳ,下肢Ⅳであり,感覚は正常.初期評価時の神経心理学検査は軽度注意障害を認めた.J-SDSAのスコアでは運転適正ありと判定できる群であった.また, 日常生活でクローヌスの出現は認めなかったが,1㎞以上の長距離歩行後にアキレス腱を伸長するとクローヌスが出現した.DS評価では,大熊らの分類ではカットオフ値を上回った項目の数に応じ0~4群で判定しており、当院ではすべての結果が0群である場合に運転再開適性ありとしている.初回DS評価の判定は1回目0群,2回目1群,3回目0群であり運転再開適正群であったが,反応検査時のブレーキ操作時にクローヌスが出現しており急ブレーキや高頻度の踏みかえ動作が不十分となるリスクが高いことから診断書を書くことができないとの判断となり, 30~45日後にDS再評価を実施するよう医師より指示があった.【経過】運転見送り理由を本人に共有し,事故のリスクに対する理解と,再評価にむけた介入の希望が聞かれた.理学療法士への情報共有を行い,下肢機能向上に対する介入を依頼し,機能訓練に伴い,長距離歩行や運搬,階段昇降後のブレーキ操作を行った.また車内への移乗動作や荷物の積み込み動作など運転前後の動作を評価した.DS評価では,ロングドライブコースや長距離歩行後の反応検査を実施しクローヌスの有無を評価した.【結果】再評価での,神経心理学検査,DS評価は運転再開適正群であった.また評価時にクローヌスの出現を認めなかった.Drとのカンファレンスを実施し,運転再開適正ありと判定された.【考察】本症例は仕事や介護のために運転を行うことから,運動負荷がかかった後でもクローヌスが出現しないかを評価することが必要だと考察し支援を行った.運転場面の評価のみならず,運転前後の作業を踏まえて介入を検討し多面的に適性評価を行うことで,再開が可能と判断されたと考察する.