講演情報

[10408-14-02]インクルーシブ保育における保育士の困り感と作業療法士の役割

*小泉 雄一1、相馬 範子1 (1. 認定NPO法人 ムーミンの会 ろぜっと保育園)

キーワード:

健常児、障害児、重症心身障害児、(インクルーシブ保育)

【はじめに】当法人の保育園では,障害児や外国籍の子ども等全ての子どもたちがクラスの一員となり,どの子も受け入れるインクルーシブ保育を謳っている.その中で,保育士らと共に,作業療法士(以下OT)がどのような役割を担うことができるのかについて,現場で働く保育士らに対するアンケート調査をもとに検討したい.【対象および方法】当法人の3つの保育園の保育士らに対して,インクルーシブ保育に関する以下のアンケート調査を行った.①インクルーシブ保育の考え方の理解②インクルーシブ保育の考え方への賛同③インクルーシブ保育における不安(ある方は具体的内容)④インクルーシブ保育における困り感(ある方は具体的内容)⑤インクルーシブ保育におけるOTへの期待(期待している方は具体的内容).これらの設問に対して4段階で回答したものをMann-WhitneyU-testで比較検討を行った.具体的内容や意見・要望の記述の比較検討にはKH Coderによるテキストマイニングを用いた.本研究に際し,当法人倫理委員会の承認を得た.データ集計には,プライバシーに配慮した上で,研究発表等に利用することを職員には書面で了承を得た.【結果および考察】アンケート回収率38.5%(91名中35名),平均経験年数9.0年(1~21年)インクルーシブ保育の考え方の理解については[よく理解している][まあまあ理解している]合わせて7割,インクルーシブ保育の考え方への賛同については[とても賛同している][まあまあ賛同している]合わせて9割であった.インクルーシブ保育における不安については[かなり不安に思っている][少し不安に思っている]合わせて約半数,インクルーシブ保育での困り感では[かなり困っていることがある][少し困ったことがある]合わせて約7割であった.インクルーシブ保育におけるOTへの期待については[かなり期待している][まあまあ期待している]合わせて約7割であった. インクルーシブ保育への賛同と理解・不安・困り感の回答のそれぞれに有意差(有意水準5%未満)が見られたことから,インクルーシブ保育について賛同・理解しているからこその不安・困り感があると考える.不安の具体的内容の記述を共起ネットワークで見ると,健常児と障害児の活動の難しさや人員不足・知識やスキル不足に対する不安が多く見られた.また,困り感についても,インクルーシブ保育の活動の難しさ・人材確保についての意見が多かった.またOTに対して約7割が何らかの期待を持ち,その内容としては,専門的知識や視点を持って障害児や不器用な子に対する活動を一緒に考えて欲しい等の意見が多く見られた.インクルーシブ保育の現場ならではの不安・困り感に対して,障害児や不器用な子への対応の仕方や,運動発達の促し方等を一緒に考えていくことでよりよい保育に繋げることがOTの役割ではないかと考える.