講演情報

[10408-14-04]回復期リハビリテーション病棟における化粧支援の実態調査
-第1報・必要性と効果に着目して-

*瀧澤 茉弘1、石橋 仁美1、中村 美空1 (1. 東京工科大学 医療保健学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻)

キーワード:

化粧、回復期リハビリテーション病棟、アンケート

【はじめに】
化粧は多くの女性が必要であると考えており,スキンケアを行う男性も少なくない(ポーラ文化研究所,2022).化粧を行うことで自尊心の向上や対人関係での積極性の向上を促進し(大坊郁夫,2001),身体機能にも効果があるとされている(池山和幸,2019).身体障害者への効果も報告されており,化粧支援によって見当識の向上,主体的な生活への変化(高井悠伽,2022),リハビリテーションへの意欲(堀りつ子,2007)につながっている.近年,回復期リハビリテーション病棟(回リハ)での報告が徐々に増えているが詳細な支援方法は確立されていない.そこで,本研究では回リハの作業療法士(OT)にアンケート調査を行い,化粧支援の必要性とその効果を明らかにすることを目的とした.
【方法】
関東地方の回リハ314施設(日本作業療法士協会会員が所属)の作業療法士を対象にWebアンケート調査を行った.質問項目は性別,経験年数,化粧支援の実施経験の有無,化粧支援の必要性の有無とその理由であり,化粧支援実施者に対しては化粧支援による対象者(CL)や家族の変化も聴取した.結果は単純集計(基本情報,必要性の有無),分析ソフトKH Coderを用いて共起ネットワーク(必要性の理由,CL・家族の変化)により分析した.本研究は大学倫理委員会の承認を得て実施した.
【結果】
有効回答は343名であった.性別は男性126名,女性215名,未回答2名,OT経験5.9±7.04年目,化粧支援の経験者125名(36%),未経験者218名(64%)であった.化粧支援の必要性ありと回答した経験者は124名(99%),未経験者は164名(75%),必要なしと答えたのは未経験者の2名(1%)のみであった.必要性ありの理由は「習慣化された生活の一部であることが多く,自分と向き合い社会への意識を持つことができるから」など,どちらともいえない理由は「優先順位が低いCL(高齢者,化粧支援に至らない・化粧習慣がない・必要性を感じていない・早期退院のCL)が多いから」など,必要性なしの理由は「対象者がいない」などであった.CLの変化は「他者を意識し,身だしなみを気にして自発的な行動がみられ,生活リズムも整った」など,家族の変化は「入院前に戻ったようだと感じ,病前のエピソードを聞かせてくれたり道具を準備されたりした」などであった.
【考察】
化粧支援未経験者が多かったものの必要性を感じているものは多くその効果を理解していた.しかしながら優先順位が低いという課題もあり,CLからの希望がないこと,高齢者であることも理由の一つであった.CLだけでなく家族が協力的になるといった変化もあり,周囲からの注目と言語フィードバックが内発的な社会性を促進するため(大坊郁夫,2001),今後導入の方法について検討する必要があると考えた.