講演情報
[10408-14-05]作業療法士による安全持続性能の導入が建築士の意識および設計に与える影響
ーアンケート調査ー
*長谷川 明嶺1、満元 貴治1 (1. 株式会社HAPROT)
キーワード:
住環境整備、アンケート、多職種連携
【はじめに】
近年,住宅設計では耐震性や省エネ性能の向上が重視されている.しかし,居住者の安全性や長期的な住みやすさに関しては,建築基準法の遵守が前提となっており,十分に考慮されていない場合がある.特にデザイン性が優先される傾向があり,安全性向上のための工夫が後回しにされるケースもある.そこで,「安全持続性能」という当社独自の基準を作業療法士が設定し,新築やリノベーション設計における安全性の向上を目指した.今回,作業療法士が安全持続性能を建築士に導入することで,建築士の意識や設計の工夫にどのような変化が生じるのかを調査したため報告する.なお発表に際し,建築士より書面にて同意を得ている.
【目的】
住宅設計における安全持続性能の導入が建築士の意識や設計に与える影響を明らかにし,作業療法士との連携による住宅の質向上の可能性を考察することを目的とする.
【方法】
主に戸建て住宅・集合住宅を設計しているA氏(一級建築士:経験27年)に,作業療法士が安全持続性能の必要性を説明した.約2年間,安全持続性能について学んでもらいながら,新築7棟の設計に安全持続性能を取り入れた.A氏に対し,「安全持続性能に対する認識の変化」,「設計への影響」,「作業療法士との連携に関する意識」についてアンケート調査およびインタビューを実施した.
【結果】
安全持続性能の導入前は,建築基準法を満たせば十分と考えていたため,一部の床面を低くするデザインや高さ1m以下は手すりのない階段,滑り止めのない階段を設計していた.一方で,安全持続性能の導入後は建築基準法のみでは安全とは言えず,安全性を認識するようになった.設計への影響について,玄関上がり框の高さ,階段の幅や高さ,手すり,トイレの向き,引戸,換気システムなどを調整するようになった.さらに,デザインと安全性は両立可能であり,工夫次第で追加コストはかからずに対応が可能であると認識するようになった.作業療法士との連携については,より具体的な安全対策を学べると感じていた.
【考察】
安全持続性能の概念を学ぶことで,A氏が従来は認識していなかった住宅設計上のリスクに気づき,設計の工夫を行うようになったことが明らかとなった.特に,建築基準法のみでは対応しきれない安全性の課題に対し,具体的な設計変更を実施するようになった点は重要である.また,A氏は作業療法士の知見を活用することで,より適切な安全対策を講じられると考えており,両者の連携は今後の住宅設計において重要な役割を果たす可能性が示唆された.作業療法士が建築士と協働し,安全で快適な住環境が実現することで,怪我の防止や病気になっても住み慣れた環境で長く生活できる可能性が高まると考えられる.今後,より多くの建築士を対象とした調査を行い,作業療法士と建築士の協働による住宅設計の新たな枠組みを構築していくことが重要である.
近年,住宅設計では耐震性や省エネ性能の向上が重視されている.しかし,居住者の安全性や長期的な住みやすさに関しては,建築基準法の遵守が前提となっており,十分に考慮されていない場合がある.特にデザイン性が優先される傾向があり,安全性向上のための工夫が後回しにされるケースもある.そこで,「安全持続性能」という当社独自の基準を作業療法士が設定し,新築やリノベーション設計における安全性の向上を目指した.今回,作業療法士が安全持続性能を建築士に導入することで,建築士の意識や設計の工夫にどのような変化が生じるのかを調査したため報告する.なお発表に際し,建築士より書面にて同意を得ている.
【目的】
住宅設計における安全持続性能の導入が建築士の意識や設計に与える影響を明らかにし,作業療法士との連携による住宅の質向上の可能性を考察することを目的とする.
【方法】
主に戸建て住宅・集合住宅を設計しているA氏(一級建築士:経験27年)に,作業療法士が安全持続性能の必要性を説明した.約2年間,安全持続性能について学んでもらいながら,新築7棟の設計に安全持続性能を取り入れた.A氏に対し,「安全持続性能に対する認識の変化」,「設計への影響」,「作業療法士との連携に関する意識」についてアンケート調査およびインタビューを実施した.
【結果】
安全持続性能の導入前は,建築基準法を満たせば十分と考えていたため,一部の床面を低くするデザインや高さ1m以下は手すりのない階段,滑り止めのない階段を設計していた.一方で,安全持続性能の導入後は建築基準法のみでは安全とは言えず,安全性を認識するようになった.設計への影響について,玄関上がり框の高さ,階段の幅や高さ,手すり,トイレの向き,引戸,換気システムなどを調整するようになった.さらに,デザインと安全性は両立可能であり,工夫次第で追加コストはかからずに対応が可能であると認識するようになった.作業療法士との連携については,より具体的な安全対策を学べると感じていた.
【考察】
安全持続性能の概念を学ぶことで,A氏が従来は認識していなかった住宅設計上のリスクに気づき,設計の工夫を行うようになったことが明らかとなった.特に,建築基準法のみでは対応しきれない安全性の課題に対し,具体的な設計変更を実施するようになった点は重要である.また,A氏は作業療法士の知見を活用することで,より適切な安全対策を講じられると考えており,両者の連携は今後の住宅設計において重要な役割を果たす可能性が示唆された.作業療法士が建築士と協働し,安全で快適な住環境が実現することで,怪我の防止や病気になっても住み慣れた環境で長く生活できる可能性が高まると考えられる.今後,より多くの建築士を対象とした調査を行い,作業療法士と建築士の協働による住宅設計の新たな枠組みを構築していくことが重要である.