講演情報
[10408-14-07]作業機能障害に着目した医療従事者の健康マネジメントの取り組み
*村岡 和也1、清家 庸佑2 (1. 横浜市総合保健医療センター、2. 東京工科大学)
キーワード:
健康管理、作業機能障害、作業バランス
【背景】
作業機能障害(OD)は健康に関連する問題である一方で,多くの医療従事者が抱える課題でもある.医療従事者自身のODを適切に捉え,その状態に応じたサポートを行う予防的作業療法の重要性が指摘されている.しかし,医療現場におけるODの改善に向けた業務・生活マネジメントの有用性については十分に検討されていない.
【目的】
本研究の目的は,医療機関に勤務する職員のODを評価・解釈し,業務および生活マネジメントの有用性と課題を検討することである.本研究は倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号R6-1).
【方法】
対象は当施設精神科デイケアに所属する職員7名とした.対象者は作業機能障害の種類と評価(CAOD)に回答し,現在のODの状態を定量化した.採点後,ODに関する情報共有および職員の現状について話し合い,解決策を検討した.その結果に基づき,業務方法や書類の見直し,プログラム運営体制の改善,職員個別の作業時間の確保を実施した.2か月後に再度CAODを実施し,変化を分析した.
【結果】
介入前のCAOD得点は49.00±13.28点であり,潜在ランクはランク1が1名,ランク2が2名,ランク3が2名,ランク4が2名であった.ODのカットオフ値を超えた者は3名おり,ODの種類では作業不均衡の得点(4.07点)が最も高かった.分析の結果,心理社会的プログラムの準備や新規見学者対応に追われ,職員個別の作業時間が確保されていないことが課題として挙げられた. これを踏まえ,業務方法やプログラム運営体制を見直し,職員の作業バランスの改善を図った.その結果,2か月後のCAOD得点は40.14±11.07点に低下し,潜在ランクはランク1が2名,ランク2が1名,ランク3が3名,ランク4が1名となった.カットオフ値を超える者はいなかった.再評価時の話し合いでは,「個人の作業時間が確保された」「業務の分散により時間と気持ちの余裕が生まれた」など,作業不均衡の改善を示唆する発言が多く聞かれた.
【考察】
本研究では,医療従事者のODに着目し,健康管理の観点から業務・生活改善を試みた.その結果,短期間の介入であっても,医療従事者のODの改善および予防に有用である可能性が示唆された.ODを共通テーマとすることで,「忙しい」と表面的に捉えられていた問題を,健康的視点から職員間で共有し,対策を講じることが可能となった.一方で,生活改善の観点では,余暇時間の過ごし方など個人のプライバシーに関わる介入が難しく,積極的な働きかけが困難であった.セラピストとクライエントの関係とは異なり,職場内での職員同士の関係性を考慮した介入方法の検討や,他施設での有用性の検討が今後の課題となる.
作業機能障害(OD)は健康に関連する問題である一方で,多くの医療従事者が抱える課題でもある.医療従事者自身のODを適切に捉え,その状態に応じたサポートを行う予防的作業療法の重要性が指摘されている.しかし,医療現場におけるODの改善に向けた業務・生活マネジメントの有用性については十分に検討されていない.
【目的】
本研究の目的は,医療機関に勤務する職員のODを評価・解釈し,業務および生活マネジメントの有用性と課題を検討することである.本研究は倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号R6-1).
【方法】
対象は当施設精神科デイケアに所属する職員7名とした.対象者は作業機能障害の種類と評価(CAOD)に回答し,現在のODの状態を定量化した.採点後,ODに関する情報共有および職員の現状について話し合い,解決策を検討した.その結果に基づき,業務方法や書類の見直し,プログラム運営体制の改善,職員個別の作業時間の確保を実施した.2か月後に再度CAODを実施し,変化を分析した.
【結果】
介入前のCAOD得点は49.00±13.28点であり,潜在ランクはランク1が1名,ランク2が2名,ランク3が2名,ランク4が2名であった.ODのカットオフ値を超えた者は3名おり,ODの種類では作業不均衡の得点(4.07点)が最も高かった.分析の結果,心理社会的プログラムの準備や新規見学者対応に追われ,職員個別の作業時間が確保されていないことが課題として挙げられた. これを踏まえ,業務方法やプログラム運営体制を見直し,職員の作業バランスの改善を図った.その結果,2か月後のCAOD得点は40.14±11.07点に低下し,潜在ランクはランク1が2名,ランク2が1名,ランク3が3名,ランク4が1名となった.カットオフ値を超える者はいなかった.再評価時の話し合いでは,「個人の作業時間が確保された」「業務の分散により時間と気持ちの余裕が生まれた」など,作業不均衡の改善を示唆する発言が多く聞かれた.
【考察】
本研究では,医療従事者のODに着目し,健康管理の観点から業務・生活改善を試みた.その結果,短期間の介入であっても,医療従事者のODの改善および予防に有用である可能性が示唆された.ODを共通テーマとすることで,「忙しい」と表面的に捉えられていた問題を,健康的視点から職員間で共有し,対策を講じることが可能となった.一方で,生活改善の観点では,余暇時間の過ごし方など個人のプライバシーに関わる介入が難しく,積極的な働きかけが困難であった.セラピストとクライエントの関係とは異なり,職場内での職員同士の関係性を考慮した介入方法の検討や,他施設での有用性の検討が今後の課題となる.