講演情報
[SY3-2]理想の薬局薬剤師像を考える 研究能力を修得する-なぜ臨床において薬剤師が研究する必要があるのか?-
○近藤 悠希 (熊本大学 大学院生命科学研究部 薬物治療設計学分野(臨床薬理学) 准教授)

薬局薬剤師にとって研究能力は、一見すると臨床実務とは縁遠い資質のように映るかもしれない。しかしながら、演者は、研究とは患者のためにこそ行うものであり、臨床に携わる薬剤師にとっても極めて本質的な営みであると考える。また、研究に必要とされる論理的思考力は、目の前の患者の薬物療法の適正化を図る上でも不可欠であり、両者は決して乖離した能力ではない。したがって、研究活動を通して論理的思考を養うことは、ひいては日常臨床における判断力の質を高めることに直結する。このような観点から、薬学教育モデル・コアカリキュラムにも、研究を行うことの重要性が明記されているのであろう。以上を踏まえ、演者は「真に臨床能力が優れた薬剤師は研究にも長けており、その逆もまた然り」との信念を抱いている。
では、薬局薬剤師はどのような内容の研究に取り組むべきであろうか。薬局薬剤師の研究においては、必ずしも難解な解析や高額な機器を用いた実験を行う必要はない。むしろ、日々の業務において抱いた素朴な疑問や、患者対応を通じて感じた臨床的な違和感、言い換えれば「現場における困りごと」こそが、研究の出発点となろう。近年では、保険薬局においても電子薬歴等に多くの情報が蓄積され、それらを活用した研究も現実的な選択肢となりつつある。しかしながら、「そこにデータがあるから網羅的に解析をやってみた」「学会発表が必要だから何か調査をしなければならない」といった動機に基づく、いわゆる“研究のための研究”は、本来の意義を見失う危うさを孕んでいる。良い研究の先には、常に患者の存在があるべきであり、その視点を堅持することこそが、臨床薬剤師としての研究活動の核心である。ゆえに研究を実施するにあたっては、「自らの研究が医療に資するものか」を繰り返し自問する姿勢が求められる。その姿勢を忘れなければ、どんな小さな研究テーマであっても、価値ある研究となり得るはずである。
演者はこれまで、自身が薬局薬剤師として経験した副作用症例を契機として、保険薬局における腎機能障害患者に対する医薬品の適正使用に関する研究を展開してきた。本セッションでは、薬局薬剤師視点での研究の実例としてこれらの研究成果を紹介しながら、薬局薬剤師に求められる研究能力について、参加者とともに議論を深めたい。
【略歴】
2005年3月 熊本大学 薬学部 薬科学科 卒業(薬剤師免許取得)
2007年3月 熊本大学 大学院薬学教育部 博士前期課程 修了
2007年4月 谷山会営薬局 株式会社(現:株式会社 南日本薬剤センター)入職
2012年3月 熊本大学 大学院薬学教育部 博士後期課程 修了(博士(薬学)取得)
2013年9月 熊本大学 大学院生命科学研究部 薬剤情報分析学分野 助教
2020年8月 熊本大学 大学院生命科学研究部 薬物治療設計学分野(臨床薬理学) 准教授 現在に至る
【受賞歴】
2022年度 日本医療薬学会 奨励賞、第2回 日本老年薬学会 Young Investigator Award 他
では、薬局薬剤師はどのような内容の研究に取り組むべきであろうか。薬局薬剤師の研究においては、必ずしも難解な解析や高額な機器を用いた実験を行う必要はない。むしろ、日々の業務において抱いた素朴な疑問や、患者対応を通じて感じた臨床的な違和感、言い換えれば「現場における困りごと」こそが、研究の出発点となろう。近年では、保険薬局においても電子薬歴等に多くの情報が蓄積され、それらを活用した研究も現実的な選択肢となりつつある。しかしながら、「そこにデータがあるから網羅的に解析をやってみた」「学会発表が必要だから何か調査をしなければならない」といった動機に基づく、いわゆる“研究のための研究”は、本来の意義を見失う危うさを孕んでいる。良い研究の先には、常に患者の存在があるべきであり、その視点を堅持することこそが、臨床薬剤師としての研究活動の核心である。ゆえに研究を実施するにあたっては、「自らの研究が医療に資するものか」を繰り返し自問する姿勢が求められる。その姿勢を忘れなければ、どんな小さな研究テーマであっても、価値ある研究となり得るはずである。
演者はこれまで、自身が薬局薬剤師として経験した副作用症例を契機として、保険薬局における腎機能障害患者に対する医薬品の適正使用に関する研究を展開してきた。本セッションでは、薬局薬剤師視点での研究の実例としてこれらの研究成果を紹介しながら、薬局薬剤師に求められる研究能力について、参加者とともに議論を深めたい。
【略歴】
2005年3月 熊本大学 薬学部 薬科学科 卒業(薬剤師免許取得)
2007年3月 熊本大学 大学院薬学教育部 博士前期課程 修了
2007年4月 谷山会営薬局 株式会社(現:株式会社 南日本薬剤センター)入職
2012年3月 熊本大学 大学院薬学教育部 博士後期課程 修了(博士(薬学)取得)
2013年9月 熊本大学 大学院生命科学研究部 薬剤情報分析学分野 助教
2020年8月 熊本大学 大学院生命科学研究部 薬物治療設計学分野(臨床薬理学) 准教授 現在に至る
【受賞歴】
2022年度 日本医療薬学会 奨励賞、第2回 日本老年薬学会 Young Investigator Award 他
