講演情報

[HbDz7mzy-02]女性の健康の再定義:個人の負担から社会的価値へ

*松原 圭子1 (1. ディスカバリー&イノベーションゲートウェイ長、女性の健康総合センター、国立成育医療研究センター(日本) (日本))
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ウィメンズヘルス
女性の健康は、思春期から妊娠・出産期、更年期、老年期に至るまでライフコース全体にわたり変化し、身体的・心理的・社会的要因が相互に影響する複雑な領域である。しかし従来の医療・研究・社会制度は、これらを疾患単位あるいはライフステージごとに分断して扱う傾向があり、各段階における課題は個別最適に対応される一方で、ライフコースを通じた一貫した支援の枠組みは十分に確立されていない。その結果、月経困難症や更年期症状、産後うつといった女性特有の健康課題はしばしば「個人の忍耐」や「自己責任」として扱われ、受診行動の遅れや支援の不足を招いている。さらに、年間約3.4兆円にのぼると試算される経済損失を含め、労働生産性の低下や離職、生活の質の低下といった甚大な社会的・経済的インパクトが過小評価されてきた実態がある。
こうした課題認識のもと、2024年に女性の健康総合センター(ICWH)が設立された。本センターは、国立機関として初めて女性の健康を包括的に対象とする医療研究拠点であり、これまで成育医療研究センターが担ってきた母子・周産期医療の蓄積を基盤に、女性のライフコース全体を視野に入れた健康課題への対応を目的としている。性差医学の視点を取り入れた基礎・臨床研究、診療機能の拡充、データ基盤の構築、さらに情報発信や政策提言を統合的に推進することで、従来分断されていた領域を横断する新たな医療モデルの構築を目指している。
ICWHは、データ基盤、基礎・臨床研究、診療機能、政策連携、社会実装を一体的に推進するプラットフォームとして機能し、さらに産学官民の連携を通じて医療と生活の間に存在するギャップを埋めることを志向する。本発表では、女性の健康を「個人の負担」から「社会的価値」へと再定義し、その具体的な取り組みを通じて、ケア、研究、社会実装を横断する新たな枠組みについて提示する。

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