Presentation Information
[09コ-KL-1]When Introspection Conserves Rather Than TransformsA Structural Dilemma in Coaching
*Yuko Toukairin1 (1. Keio University)
<演者略歴>
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科兼総合政策学部准教授 博士(政策・メディア)。指導者としての実践経験(元・高校男子ハンドボール部監督として全国優勝)をベースに、指導者が無意識に陥る「強制」と「放任」の繰り返しや、成功体験への固執といったコーチングの構造的ジレンマの解明、および指導者の自己変容を支える対話的支援を専門とする。著書に『コーチングのジレンマ』(ブックハウスHD)など。
慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科兼総合政策学部准教授 博士(政策・メディア)。指導者としての実践経験(元・高校男子ハンドボール部監督として全国優勝)をベースに、指導者が無意識に陥る「強制」と「放任」の繰り返しや、成功体験への固執といったコーチングの構造的ジレンマの解明、および指導者の自己変容を支える対話的支援を専門とする。著書に『コーチングのジレンマ』(ブックハウスHD)など。
【趣旨と問題提起】
スポーツ活動に関わる多くの指導者は「選手の自立」という理想(標榜理論)を掲げながら、実際にはそれとは乖離した行動(使用理論)を無意識に選択している。最大の問題は、指導者自身がこの矛盾に気づかず、ジレンマとしてさえ認識できていない点にある。本論では、自身の経験則を絶対視し、前提を問い直さぬスタイルを「保守的コーチング」と定義する。これはヒエラルキーに基づく「強制」と「放任」を繰り返し(東海林,2013)、過去の成功体験への固執から選手起用の硬直化やバイアスを招く状態を指す。この回帰は実績のある指導者ほど陥りやすいという逆説的な傾向があるが、原因は知識不足ではない。アージリス(1991)が指摘するように、人は自らの無能さをさらけ出す脅威を避けるため、無意識に「防衛的推論」を作動させる。その結果、問題の原因を環境や選手に転嫁し、自らの前提を疑わない「省察を拒むプログラム」を熟練させていく。指導者が行う内省は、既存の枠組みを正当化する「保守的な内省」に変質し、これが自らの変容を強固に封じ込めてしまうのである。「揺るぎない自信」を美徳とするスポーツ文化も手伝い、スタイルを疑うことは自己否定の恐怖を伴うため、防衛的解釈の罠から抜け出せない。
この強固な防衛の殻を破り、「熟練した無自覚」から脱却するには、指導行動の直視すべき介入は一つの契機となる。その際、指導者の内面にはプライドの傷つきや「痛み」を伴う激しいジレンマが生じる。
【フロアへの問い】
無自覚な矛盾という構造的ジレンマを前に、省察を拒む防衛機制をどう乗り越えるか。私たちはどのように指導者の「痛み」に寄り添い、その学びと変容を促していけるのか。当日は具体的な介入事例を提示し、会場の諸氏と共に、指導者の自己変容を支えるアプローチについて探求したい。
スポーツ活動に関わる多くの指導者は「選手の自立」という理想(標榜理論)を掲げながら、実際にはそれとは乖離した行動(使用理論)を無意識に選択している。最大の問題は、指導者自身がこの矛盾に気づかず、ジレンマとしてさえ認識できていない点にある。本論では、自身の経験則を絶対視し、前提を問い直さぬスタイルを「保守的コーチング」と定義する。これはヒエラルキーに基づく「強制」と「放任」を繰り返し(東海林,2013)、過去の成功体験への固執から選手起用の硬直化やバイアスを招く状態を指す。この回帰は実績のある指導者ほど陥りやすいという逆説的な傾向があるが、原因は知識不足ではない。アージリス(1991)が指摘するように、人は自らの無能さをさらけ出す脅威を避けるため、無意識に「防衛的推論」を作動させる。その結果、問題の原因を環境や選手に転嫁し、自らの前提を疑わない「省察を拒むプログラム」を熟練させていく。指導者が行う内省は、既存の枠組みを正当化する「保守的な内省」に変質し、これが自らの変容を強固に封じ込めてしまうのである。「揺るぎない自信」を美徳とするスポーツ文化も手伝い、スタイルを疑うことは自己否定の恐怖を伴うため、防衛的解釈の罠から抜け出せない。
この強固な防衛の殻を破り、「熟練した無自覚」から脱却するには、指導行動の直視すべき介入は一つの契機となる。その際、指導者の内面にはプライドの傷つきや「痛み」を伴う激しいジレンマが生じる。
【フロアへの問い】
無自覚な矛盾という構造的ジレンマを前に、省察を拒む防衛機制をどう乗り越えるか。私たちはどのように指導者の「痛み」に寄り添い、その学びと変容を促していけるのか。当日は具体的な介入事例を提示し、会場の諸氏と共に、指導者の自己変容を支えるアプローチについて探求したい。
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