講演情報
[5]吉田正春使節団が見た19世紀テヘラン都市改造
○松原 康介1 (1. 筑波大学)
キーワード:
イラン、ペルシア、バーザール、カージャール朝、ゴレスターン宮殿、古川宣誉
本研究の目的は、19世紀の都市改造直後のテヘランの様相を、 1880年にイランを初めて公式訪問した吉田正春使節団による『回彊探検 ペルシャの旅』及び『ペルシャ紀行』と、当時の古地図や写真との比較から明らかにすることである。研究方法は歴史的アプローチを採用する。まず、過去の研究を基に、テヘランの都市形成史を要約し、後々の都市再開発に関連する骨格構造(宮殿、広場、道路、庭園、城壁など)に焦点を当てて概括する(第2章)。次に、2つの主要な一次資料『回彊探検 ペルシャの旅』と『ペルシャ紀行』から、テヘランの都市再開発に関する記述を抽出し、分析する(第3章)。続いて、両テキストの記録を1891年の地図や古写真と照合し、都市変容の軌跡を地図上にプロットして、その特徴を検討する(第4章)。最後に、4カ月近くテヘランに滞在した吉田らの所感(賞賛や批判等)も検討し、いわば明治期日本人の海外都市計画体験としての位置づけも試みる(5章)。吉田使節団の記録は、先進国からの都市イメージの受容としてではなく、いわば机を並べて学ぶ側同士の、それも独自の都市文化を一応は持っている者同士で共有されるべき事例として意味を持つ。
