講演情報

[8]滞留を伴う散策行動が発生しやすい都市環境の特性―福岡市都心部の位置情報データを用いた行動解析を通して―

○角南 萌々子1、黒瀬 武史2、長谷川 大輔3 (1. 株式会社三菱総合研究所、2. 九州大学大学院人間環境学研究院、3. 東京大学 不動産イノベーション研究センター)
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キーワード:

位置情報データ、行動解析、歩行者行動、ランブリング、都市環境

近年、都市空間における質的価値が見直され、歩きたくなるまちなかへの関心が高まっている。しかし、従来の評価指標では歩行者交通量の多さ等の量的評価と、居心地の良さ等の質的評価が混同される傾向がある。本研究では、位置情報データを用いて「滞留を伴う散策行動(ランブリング行動)」を定量的に分析し、歩行者の活動の質を考慮した評価手法を提案した。また、ランブリング行動者の割合(RA率)を指標化し、その分布と都市環境要素との関連性を検討した。その結果、歩行者数とRA率は異なる分布傾向を示し、行動の質を考慮した評価手法の必要性が示唆された。また、高密度地域では、商業用途やアメニティ施設の豊富さとRA率に強い相関が見られた一方、中低密度地域では歩行環境や店舗の影響力がランブリング行動に影響を与える可能性が示唆された。本研究の成果は、都市空間の設計や政策形成において、居心地が良く歩きたくなる都市の質的評価と具体的な空間創出に貢献する基盤となる。今後は、地域差や時間帯・曜日別、さらには経年変化の分析を通じて、ランブリング行動のメカニズム解明を進めることが有用である。