講演情報
[77]景観特性と心理的要因が回復環境形成に与える影響都市・歴史文化・自然環境の比較
○及川 智也1、甲斐田 直子1 (1. 筑波大学)
キーワード:
回復環境、景観選好、都市景観、場所感覚、場所愛着
都市生活における精神的回復には、回復環境の存在が不可欠である。自然環境が回復を促すことは知られているが、都市の建造環境における回復可能性は十分に解明されていない。本研究では、都市環境、歴史・文化環境、自然環境の3環境における回復環境の認識の違いを検証した。538名を対象とした景観画像評価のオンライン調査により取得した景観選好、場所感覚、回復感の主観的評価データにもとづく多重比較検定分析の結果、回復感覚は自然環境で最も高く、歴史・文化環境が次いだ。一方で、視覚的整然性および感情的充足感は、歴史・文化環境において最も高く評価された。提示画像の景観特性に関する客観的評価データを加えて行った共分散構造分析の結果、全環境において、景観特性が視覚的整然性、感情的充足感、場所感覚、回復感覚に至る関係性が認められたが、その経路や構造は環境間で異なることが明らかとなった。特に、場所感覚は景観特性と回復感覚を媒介する重要な要因であり、都市環境においては同感覚を醸成する体験提供などの改善余地があり、景観特性としては水辺空間や建築の複雑性が都市景観デザインにおける回復性向上に寄与する可能性が示唆された。
