講演情報
[116]津波浸水想定区域における人口動態に関する研究―静岡県を対象として―
○山本 翔太1、山梨 裕太2、荒木 笙子3、苅谷 智大4、姥浦 道生4 (1. デロイトトーマツファイナンシャルアドバイザリー合同会社、2. 東北大学大学院工学研究科、3. 岩手大学農学部、4. 東北大学災害科学国際研究所)
キーワード:
津波浸水想定区域、人口減少、静岡県、都市部
本研究では、津波浸水域指定区域の設定に伴った、区域内の人口増減の実態とその要因について明らかにした。統計的な有意差の観点からほぼ全ての地域で、津波浸水想定区域の指定後では、指定区域内で相対的に人口減少が進行したことから、結果としては区域指定が人の居住に一定の影響を及ぼした可能性が指摘できる。特に一定の人口流入のある都市的性格の強いエリアにおいては、立地選好の過程で津波浸水想定区域がネガティブに機能し、より区域内外での人口変化の差が表れたのではないかと考えられる。他方で、人口流入の少ないそれ以外のエリアでは、移転等の積極的な人口移動は限定的であったことから、区域内外で大きな差が出にくかったと見られる。すなわち、津波浸水想定区域の公表は、外部からの流入の抑制には一定の効果を及ぼした可能性はあるが、内部からの転出を促進する効果は弱いと推測される。このため、各地方自治体においては区域内の居住者の津波対策や移転等の補助について複合的に政策を実施し、津波災害からの安全性を高めていく必要があると言える。
