講演情報
[R1-02]岡山県大佐山のヒスイ輝石岩からの新鉱物、アマテラス石(amaterasuite)について
*浜根 大輔1、永嶌 真理子2、森 祐紀3、大西 政之、下林 典正4、松本 崇5、田邊 満雄 (1. 東京大学、2. 山口大学・院創成、3. 高輝度光科学研究センター、4. 京都大学・院理、5. リガク)
キーワード:
アマテラス石、新鉱物、ヒスイ輝石岩、大佐山
ヒスイ輝石岩はヒスイ輝石を主要構成鉱物とする岩石であり、これまでに、新潟県糸魚川産のヒスイ輝石岩からは松原石や蓮華石といった新鉱物が見出されている。近年には岡山県大佐山のヒスイ輝石岩からも同様の鉱物に加え、複数の未詳鉱物の存在が報告された。我々は、これら未詳鉱物のうちの一つに着目し、それがSr4Ti6Si4O23(OH)Clを理想化学組成とする新鉱物であることを明らかにした。命名にあたっては、ヒスイ輝石岩が国石という「日本の象徴」としての意味を持つこと、新鉱物の結晶構造にある「二面性」に注目した。そして、日本神話に登場する天照大神が日本の象徴的存在であること、「荒魂」と「和魂」という二面性を内包することにちなみ、新鉱物はアマテラス石(amaterasuite)と命名された。アマテラス石は、国際鉱物学連合の新鉱物・命名・分類委員会により正式に承認されている(IMA No. 2024-056)。
岡山県新見市大佐山地域の一部で、角閃石脈を伴うヒスイ輝石岩塊が確認された。角閃石脈中にはチタン石の反応縁を持つルチルが多く産出し、ルチルに生じた無数のクラック中に松原石やアマテラス石が生じる。また、岩塊の外縁部では交代変質が進行し、白色部にぶどう石が混入し、角閃石は緑泥石に変化する。この変質部でもルチルは残留するが、クラックは主にチタン石で満たされるようになり、松原石は減少し、アマテラス石が外縁のチタン石中に150 μm程度に成長する。さらに、タウソン石が伴われ、ルチル+チタン石集合の最外縁に分布する(図1)。アマテラス石は大佐山のほかに、糸魚川市の海岸で得られたヒスイ輝石岩礫からも見出された。それは松原石と共存するなど大佐山産とは産状がやや異なっている。
WDS分析によるアマテラス石の経験式は(Sr3.32Ba0.64)Σ3.96(Ti5.73Fe0.16Nb0.02)Σ5.91Si4.15O23(OH)0.95Cl1.05であり、放射光粉末X線回折実験によって精密化された格子定数は空間群Fdddにおいてa = 5.85558(2) Å, b = 20.43960(8) Å, c = 33.28240(12) Å, V = 3983.43(3) Å3 (Z = 8)であった。類似の構造を有するチタノシリケイト合成相にはいくつかのポリタイプが予想されており、アマテラス石が単相か混相かを透過型電子顕微鏡で確認したところ、アマテラス石は4Oポリタイプの単相であることが確認された。そのうえで、単結晶X線構造解析によって詳細を明らかにした。
アマテラス石の結晶構造は、三つのTiO6八面体がc軸方向に連結したユニットを持ち、そのユニットはa軸方向にリボン状に連結する。そして、4本のリボンの中心には4個のSiO4四面体からなるリングがあり、リボンと頂点を共有する。リボンとリングの間には9個の酸素と1個の塩素で配位されるSr(Ba)を中心とする多面体がある。また、この構造にはいわゆる二面性があり、対となる四面体リング、Sr(Ba)サイト、およびClサイトは、一方が存在すると他方が存在しない。これら二つをAおよびBタイプとして、その存在率はそれぞれ85%および15%程度であった。そして、SrのSrAサイトへの強い選択性が観測された。この現象は類似の構造を有するチタノシリケイト合成相においても同様であり、Srのサイト選択性が観測されている(Cadoni et al., 2008)。
Cadoni et al. (2008), Acta Cryst., B64, 669.
岡山県新見市大佐山地域の一部で、角閃石脈を伴うヒスイ輝石岩塊が確認された。角閃石脈中にはチタン石の反応縁を持つルチルが多く産出し、ルチルに生じた無数のクラック中に松原石やアマテラス石が生じる。また、岩塊の外縁部では交代変質が進行し、白色部にぶどう石が混入し、角閃石は緑泥石に変化する。この変質部でもルチルは残留するが、クラックは主にチタン石で満たされるようになり、松原石は減少し、アマテラス石が外縁のチタン石中に150 μm程度に成長する。さらに、タウソン石が伴われ、ルチル+チタン石集合の最外縁に分布する(図1)。アマテラス石は大佐山のほかに、糸魚川市の海岸で得られたヒスイ輝石岩礫からも見出された。それは松原石と共存するなど大佐山産とは産状がやや異なっている。
WDS分析によるアマテラス石の経験式は(Sr3.32Ba0.64)Σ3.96(Ti5.73Fe0.16Nb0.02)Σ5.91Si4.15O23(OH)0.95Cl1.05であり、放射光粉末X線回折実験によって精密化された格子定数は空間群Fdddにおいてa = 5.85558(2) Å, b = 20.43960(8) Å, c = 33.28240(12) Å, V = 3983.43(3) Å3 (Z = 8)であった。類似の構造を有するチタノシリケイト合成相にはいくつかのポリタイプが予想されており、アマテラス石が単相か混相かを透過型電子顕微鏡で確認したところ、アマテラス石は4Oポリタイプの単相であることが確認された。そのうえで、単結晶X線構造解析によって詳細を明らかにした。
アマテラス石の結晶構造は、三つのTiO6八面体がc軸方向に連結したユニットを持ち、そのユニットはa軸方向にリボン状に連結する。そして、4本のリボンの中心には4個のSiO4四面体からなるリングがあり、リボンと頂点を共有する。リボンとリングの間には9個の酸素と1個の塩素で配位されるSr(Ba)を中心とする多面体がある。また、この構造にはいわゆる二面性があり、対となる四面体リング、Sr(Ba)サイト、およびClサイトは、一方が存在すると他方が存在しない。これら二つをAおよびBタイプとして、その存在率はそれぞれ85%および15%程度であった。そして、SrのSrAサイトへの強い選択性が観測された。この現象は類似の構造を有するチタノシリケイト合成相においても同様であり、Srのサイト選択性が観測されている(Cadoni et al., 2008)。
Cadoni et al. (2008), Acta Cryst., B64, 669.
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