講演情報
[R1-P-07]新潟県糸魚川地域に産するヒスイ輝石岩試料と共存岩相の関係
*延寿 里美1、岡田 侑楽1、小河原 孝彦2 (1. 愛媛大学、2. フォッサマグナミュージアム)
キーワード:
ヒスイ輝石岩、エッケルマン閃石角閃岩、オンファス輝石
【はじめに】糸魚川地域においてヒスイ輝石岩は結晶片岩や角閃岩などと共に,蛇紋岩メランジュ内のブロックとして産する(松本,1980)が,ヒスイ輝石岩のほとんどは転石として見られ,他岩相との関係性がわかる露頭はほとんど報告されていない.本研究で使用するフォッサマグナミュージアム所蔵の試料は糸魚川地域で採取された転石であるが,ヒスイ輝石岩が緑色の他岩相と共存しており形成プロセスを知るのに有用である. 本研究ではこの試料の産状を明らかにし, ヒスイ輝石岩の形成過程における周囲の岩相との関係性や相互作用について考察を行う.
【分析手法】フォッサマグナミュージアムより借用したヒスイ輝石岩の分析を行った. RIGAKU 製 Ultima Ⅳを使用して粉末 X 線回折実験(XRD),偏光顕微鏡にて組織観察を行った.またOxford 製エネルギー分散型 X 線分析装置 EDS を装着した JEOL 製 走査型顕微鏡(SEM)JSM-6510LV を用いて分析を行った. 【観察結果】博物館試料のヒスイ輝石岩と共存する緑色の他岩相は借用当初は見た目から蛇紋岩と予想してしたが主に角閃石や輝石から構成されていた. 濃緑色部はエッケルマン閃石からなり, ヒスイ輝石岩との間に細粒なオンファス輝石からなる幅1-2センチ程度の鮮緑色の反応帯が見られた.濃緑色部と鮮緑色部の境界は漸移的で,鮮緑色部と白色のヒスイ輝石岩部分との境界は明瞭であった. 鮮緑色部の一部では白色部が脈状に入り込んでいる. 白色のヒスイ輝石岩部分は主にヒスイ輝石からなり, 方沸石が間を埋めている. ヒスイ輝石は粗粒(500-700μm), 中粒(100-170μm), 細粒(10-20 μm)と場所ごとに粒径に差が見られ, 鮮緑色部との境界付近では細粒なものが多かった. 粗粒なものはひし形断面を示す自形結晶として産し, コアリム構造を有していた. コア部ではペクトライトの柱状結晶が包有物としてよく見られた. 粗粒部のコア及び中粒部はヒスイ輝石の端成分に近い組成である一方で, 粗粒部のリム及び細粒部はCa (0.04-0.09 apfu), Mg (0.05-0.10 apfu), Fe(0.01-0.02 apfu)に比較的富んでいた. また白色部全体を切るようにベスブ石の細脈がはしっていた.
【考察】本研究のヒスイ輝石岩は構成鉱物に石英を含まないことや,前駆物質となる鉱物や組織が見られないことから流体からヒスイ輝石が晶出した(P-type)と考えられる(Tsujimori et al., 2017). 化学組成や組織観察よりヒスイ輝石は大きく二段階で形成されたと考えられ, 粗粒コアや中粒部が結晶化した後に,境界部付近で濃緑色側では角閃石を置き換えるようにオンファス輝石が形成され,ヒスイ輝石岩側では粗粒結晶リムや細粒結晶が形成されたと考えられる. 糸魚川のヒスイ輝石岩の共存岩相としては, 緑色のオンファス輝石に富み白色のヒスイ輝石岩の小塊を含むもの(Tsujimori, 2017)や暗灰色のパーガス閃石(Tsujimori and Harlow, 2017)が報告されている (中には蛇紋岩との表記もあったが測定データを伴わないため未確定とする). 今回の産状はそれらよりもHarlow et al. (2015)で紹介されている蛇紋岩との間の反応帯の一部と類似している; ヒスイ輝石岩側から蛇紋岩に向かってヒスイ輝石岩, (アルビタイト, )エッケルマン閃石-藍閃石角閃岩あるいは緑泥石帯, 蛇紋岩. これより濃緑色部は一段階目のヒスイ輝石に伴い蛇紋岩との境界部で形成されたと考えられ, その後変形による亀裂形成とCa, Mg, Feの供給によりオンファス輝石への置き換えと二段階目のヒスイ輝石の形成が起こったと思われる. また, 脈として産するベスブ石は糸魚川地域のロジン岩中でも見られるため, これらの反応はロジン化作用に先行して起こっていると推察される.
【分析手法】フォッサマグナミュージアムより借用したヒスイ輝石岩の分析を行った. RIGAKU 製 Ultima Ⅳを使用して粉末 X 線回折実験(XRD),偏光顕微鏡にて組織観察を行った.またOxford 製エネルギー分散型 X 線分析装置 EDS を装着した JEOL 製 走査型顕微鏡(SEM)JSM-6510LV を用いて分析を行った. 【観察結果】博物館試料のヒスイ輝石岩と共存する緑色の他岩相は借用当初は見た目から蛇紋岩と予想してしたが主に角閃石や輝石から構成されていた. 濃緑色部はエッケルマン閃石からなり, ヒスイ輝石岩との間に細粒なオンファス輝石からなる幅1-2センチ程度の鮮緑色の反応帯が見られた.濃緑色部と鮮緑色部の境界は漸移的で,鮮緑色部と白色のヒスイ輝石岩部分との境界は明瞭であった. 鮮緑色部の一部では白色部が脈状に入り込んでいる. 白色のヒスイ輝石岩部分は主にヒスイ輝石からなり, 方沸石が間を埋めている. ヒスイ輝石は粗粒(500-700μm), 中粒(100-170μm), 細粒(10-20 μm)と場所ごとに粒径に差が見られ, 鮮緑色部との境界付近では細粒なものが多かった. 粗粒なものはひし形断面を示す自形結晶として産し, コアリム構造を有していた. コア部ではペクトライトの柱状結晶が包有物としてよく見られた. 粗粒部のコア及び中粒部はヒスイ輝石の端成分に近い組成である一方で, 粗粒部のリム及び細粒部はCa (0.04-0.09 apfu), Mg (0.05-0.10 apfu), Fe(0.01-0.02 apfu)に比較的富んでいた. また白色部全体を切るようにベスブ石の細脈がはしっていた.
【考察】本研究のヒスイ輝石岩は構成鉱物に石英を含まないことや,前駆物質となる鉱物や組織が見られないことから流体からヒスイ輝石が晶出した(P-type)と考えられる(Tsujimori et al., 2017). 化学組成や組織観察よりヒスイ輝石は大きく二段階で形成されたと考えられ, 粗粒コアや中粒部が結晶化した後に,境界部付近で濃緑色側では角閃石を置き換えるようにオンファス輝石が形成され,ヒスイ輝石岩側では粗粒結晶リムや細粒結晶が形成されたと考えられる. 糸魚川のヒスイ輝石岩の共存岩相としては, 緑色のオンファス輝石に富み白色のヒスイ輝石岩の小塊を含むもの(Tsujimori, 2017)や暗灰色のパーガス閃石(Tsujimori and Harlow, 2017)が報告されている (中には蛇紋岩との表記もあったが測定データを伴わないため未確定とする). 今回の産状はそれらよりもHarlow et al. (2015)で紹介されている蛇紋岩との間の反応帯の一部と類似している; ヒスイ輝石岩側から蛇紋岩に向かってヒスイ輝石岩, (アルビタイト, )エッケルマン閃石-藍閃石角閃岩あるいは緑泥石帯, 蛇紋岩. これより濃緑色部は一段階目のヒスイ輝石に伴い蛇紋岩との境界部で形成されたと考えられ, その後変形による亀裂形成とCa, Mg, Feの供給によりオンファス輝石への置き換えと二段階目のヒスイ輝石の形成が起こったと思われる. また, 脈として産するベスブ石は糸魚川地域のロジン岩中でも見られるため, これらの反応はロジン化作用に先行して起こっていると推察される.