講演情報
[R1-P-15]群馬県茂倉沢鉱山産の4種の褐簾石族新鉱物について
*永嶌 真理子1、浜根 大輔2、大西 政之、宮島 浩、原田 明 (1. 山口大・院創成、2. 東大・物性研)
キーワード:
赤坂簾石、新鉱物、茂倉沢、バナジウム、レアアース
群馬県茂倉沢鉱山から見出された4種の褐簾石族新鉱物「セリウム赤坂簾石」(IMA No. 2025-001),「ランタン赤坂簾石」(IMA No.2025-002),「セリウムバナジン赤坂簾石」(IMA No.2024-044),「ランタンバナジン赤坂簾石」(IMA No.2025-003)の産状,化学組成,結晶化学的特徴について報告する.赤坂簾石は,緑簾石上族の褐簾石族に属し,その理想式はA1CaA2REE3+M1Me3+M2AlM3Mn2+(SiO4)(Si2O7)O(OH) (Z = 2)である.褐簾石ではM3サイトでFe2+が卓越するが,赤坂簾石はMn2+が卓越する種である.本研究で見出された赤坂簾石はA2サイトでCeもしくはLaが,M1サイトでAlもしくはV3+が卓越することが特徴である.これらはいずれも層状マンガン鉱床のバラ輝石に富む鉱石中の石英レンズ中に暗褐色の板状~針状結晶として少量産出し(図1a),その量比はランタンバナジン赤坂簾石 >>> セリウムバナジン赤坂簾石 > ランタン赤坂簾石 > セリウム赤坂簾石である.
各サンプルについてEPMA-WDS分析を行ったところ,いずれの種もMnOに富み,Al ↔ V3+ 置換およびREE3+ + Mn2+ ↔ Ca(+Sr) + (Al+V3+)置換による組成変化が認められるものの,その変化は限定的で各サイトの卓越陽イオン種に影響を及ぼすほどではなかった.V3+卓越種はSrに富む傾向があり,最大SrO含有量は4.76 wt.%に達した.
結晶構造解析結果(R1 = 2.20-2.86%)にもとづく結晶構造図,得られた格子定数とA1, A2, M1, M2, M3サイトの席占有率をそれぞれ図1b,1cに示す.いずれ試料でもA1, M3サイトでそれぞれCa, Mn2+が卓越するが,A1サイトでCaへのMn2+置換が顕著で,その割合は40%を超える (図1c).さらにM1V3+卓越種では,M1サイトに加え,最も小さい6配位席であるM2サイトでもV3+がAlを置換し,特にランタンバナジン赤坂簾石ではM2サイトの33%をV3+が占める(図1c).各サイトの席占有率は格子定数に反映され,M1V3+卓越種のa, b, c軸,格子体積Vはいずれも,M1Al卓越種よりも大きい(図1c).これは主にM1サイト中のAlをV3+が置換したことによる<M1-O>の伸長の影響と考えられる.緑簾石上族ではa, b, c軸の変化はM1, M3サイト中の陽イオン分布を反映するが[1],β角は主にA1, A2サイトの陽イオン分布を反映することが知られてきた[2, 3].特にA2サイト中のREE含有量の増加[2]とA1サイト中のMn2含有量の増加[3]は,いずれもβ角を減少させることが示唆されており,事実,Ce, LaがA2サイトの70%以上を占有し,Caに次いでMn2+がA1サイトを多く占める本研究試料のβ角(113.6-113.8º)は,アンドロス石[理想式:A1Mn2+A2REE3+M1AlM2AlM3Mn2+Si3O12(OH)]と近い値(113.1-113.9º[4,5])を示す.また先行研究で指摘されたδ[(A1-O6)-(A1-O5)] (Å)とA1サイトのMn2+含有量の正の相関[3,5,6]に関して,本研究もこの傾向を支持するが,本研究で得られた値は先行研究[6]で提案された近似式から見積もられる値よりも大きく,特にランタンバナジン赤坂簾石においてその差は顕著である(obs. 0.495Å, est. 0.432 Å).これはM1サイト中のV3+の増加に伴うM1-O5の伸長がA1-O5は短縮を促したことで,結果的にδ[(A1-O6)-(A1-O5)]値の増加を引き起こしたためと解釈できる.
[1] 例えばFranz & Liebscher, RMG56, 1-82 (2004), [2] 例えばGieré & Sorensen, RMG56, 431-493 (2004), [3] Nagashima et al. Miner. Mag. 79, 735-753 (2015), [4] Cenki-Tok et al. Eur. J. Miner., 18, 569-582 (2006), [5] Bonazzi et al. Amer. Miner. 81, 735-742 (1996), [6] Biagioni et al. Minerals, 9, 353 (2019)
各サンプルについてEPMA-WDS分析を行ったところ,いずれの種もMnOに富み,Al ↔ V3+ 置換およびREE3+ + Mn2+ ↔ Ca(+Sr) + (Al+V3+)置換による組成変化が認められるものの,その変化は限定的で各サイトの卓越陽イオン種に影響を及ぼすほどではなかった.V3+卓越種はSrに富む傾向があり,最大SrO含有量は4.76 wt.%に達した.
結晶構造解析結果(R1 = 2.20-2.86%)にもとづく結晶構造図,得られた格子定数とA1, A2, M1, M2, M3サイトの席占有率をそれぞれ図1b,1cに示す.いずれ試料でもA1, M3サイトでそれぞれCa, Mn2+が卓越するが,A1サイトでCaへのMn2+置換が顕著で,その割合は40%を超える (図1c).さらにM1V3+卓越種では,M1サイトに加え,最も小さい6配位席であるM2サイトでもV3+がAlを置換し,特にランタンバナジン赤坂簾石ではM2サイトの33%をV3+が占める(図1c).各サイトの席占有率は格子定数に反映され,M1V3+卓越種のa, b, c軸,格子体積Vはいずれも,M1Al卓越種よりも大きい(図1c).これは主にM1サイト中のAlをV3+が置換したことによる<M1-O>の伸長の影響と考えられる.緑簾石上族ではa, b, c軸の変化はM1, M3サイト中の陽イオン分布を反映するが[1],β角は主にA1, A2サイトの陽イオン分布を反映することが知られてきた[2, 3].特にA2サイト中のREE含有量の増加[2]とA1サイト中のMn2含有量の増加[3]は,いずれもβ角を減少させることが示唆されており,事実,Ce, LaがA2サイトの70%以上を占有し,Caに次いでMn2+がA1サイトを多く占める本研究試料のβ角(113.6-113.8º)は,アンドロス石[理想式:A1Mn2+A2REE3+M1AlM2AlM3Mn2+Si3O12(OH)]と近い値(113.1-113.9º[4,5])を示す.また先行研究で指摘されたδ[(A1-O6)-(A1-O5)] (Å)とA1サイトのMn2+含有量の正の相関[3,5,6]に関して,本研究もこの傾向を支持するが,本研究で得られた値は先行研究[6]で提案された近似式から見積もられる値よりも大きく,特にランタンバナジン赤坂簾石においてその差は顕著である(obs. 0.495Å, est. 0.432 Å).これはM1サイト中のV3+の増加に伴うM1-O5の伸長がA1-O5は短縮を促したことで,結果的にδ[(A1-O6)-(A1-O5)]値の増加を引き起こしたためと解釈できる.
[1] 例えばFranz & Liebscher, RMG56, 1-82 (2004), [2] 例えばGieré & Sorensen, RMG56, 431-493 (2004), [3] Nagashima et al. Miner. Mag. 79, 735-753 (2015), [4] Cenki-Tok et al. Eur. J. Miner., 18, 569-582 (2006), [5] Bonazzi et al. Amer. Miner. 81, 735-742 (1996), [6] Biagioni et al. Minerals, 9, 353 (2019)
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