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[R2-03]フラックス法を用いた準安定クリストバライトの生成条件の探査

嶋 健皓1、*小松 一生1、鍵 裕之1 (1. 東京大学)
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キーワード:

クリストバライト、トリディマイト、フラックス法、X線回折

クリストバライトはSiO2多形の一種であり、常圧下では1470℃から1728℃に安定領域がある。しかし、1470℃以下の低温でも準安定に生成することが知られている[e.g., Heaney, 1994]。例えば、オパールの1050℃以上の加熱処理[Jones and Segnit, 1971]や、Li2WO4やV2O5-M2CO3 (M=Na, K) 等のフラックスを用いた石英の加熱処理[Nukui and Floerke, 1987; Bruhns and Fischer, 2000]等の研究例がある。しかし、なぜ準安定なクリストバライトが低温で生成するのかなど、その生成条件や結晶化のメカニズムには不明な点も多く残されている。今回我々は、先行研究よりシンプルな系でのクリストバライトの生成条件を探査することを目的に、V2O5フラックスのみを用いて、様々な温度・保持時間のもとで合成実験を行った。
出発物質には、アモルファスシリカを用いV2O5と質量比1:1で混合したものを用いた。また比較実験として、同じ条件での合成実験をアモルファスシリカのみでも行った。出発試料はペレット化したのちに白金るつぼに入れ、電気炉にて850-1200℃の温度にて、5時間または50時間保持し、室温で回収したのちに硝酸でフラックスを除去した。生成物の観察には、エネルギー分散型X線分光装置(EDS)を備えた走査型電子顕微鏡 (SEM, JCM-7000, JEOL)および粉末X線回折装置 (PXRD, MiniFlex6000, Rigaku)を用いた。
保持時間を50時間とした合成実験では、850℃でクリストバライトが結晶化し、保持温度の上昇とともに安定相であるトリディマイトの量が増えていくことが観察された。簡易的なEDSの結果から生成物には微量のVが含まれていることがわかった。しかし、低温で生成したクリストバライトが徐々に安定相であるトリディマイトに変化していったことを考えると、生成したクリストバライトは準安定相であり、微量のVが直接安定化に寄与したとは考えにくい。従来から指摘されているように[e.g., Bruhns and Fischer, 2000]、フラックス材はクリストバライトの結晶化に触媒として機能していることを示唆している。
5時間の保持時間では、1000℃から1200℃の温度領域でクリストバライトおよび微量のトリディマイトが生成された。また、フラックスを含まないアモルファスシリカのみの合成実験では、1150℃で微量のクリストバライトが結晶化し、1200℃ではクリストバライトと微量のトリディマイトが観察された。しかし、フラックスありの場合に比べてPXRDパターンのピーク幅が大きく、アモルファスシリカから直接結晶化したクリストバライトはその結晶子サイズがフラックスありの場合に比べて小さいことが示唆された。このことはSEM観察でも確認され、フラックスを含む試料の方が、より低温で結晶化し結晶性も良いことが確かめられた。発表では、これらの合成実験の結果を踏まえ、準安定クリストバライトの生成メカニズムを議論したい。

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